「72時間の壁」。災害発生後、丸3日を過ぎると安否不明者の生存率が著しく低下するとされ、人命救助の境界線とも言われる。
2011年3月14日朝、東日本大震災の宮城県災害対策本部は、刻々と近づく72時間の壁をにらみつつ、難しい判断を迫られた。
午前9時に始まった第12回本部会議。「われわれが元気を出さないと県民に元気が出ない。力強くやっていこう」。冒頭、本部長の知事村井嘉浩はこう語り掛け、気合を入れ直した。
疲労と焦燥が積み重なり、庁議室はぴりぴりとした空気が支配した。その「衝突」は部局長が順番に状況を報告する中で起きた。
「沿岸部に相当数の遺体がある。火葬が間に合わず腐乱も懸念される。地元の首長たちは土葬で早急に処理したいと言っている」
環境生活部長小泉保は被災自治体の切実な訴えを紹介した。南三陸町からは1000体の土葬の要望があり、手続きの迅速化を求められたことも明かした。
すかさず、県警本部長竹内直人が「知事、私から意見が…」と割り込み、異論があることを暗に伝えた。竹内が話す順番は後だったが、不穏な空気を察した村井は「この場で問題を片付けよう」と仕切った。
「ご遺体は収容し、検視して、身元を確認する作業が必須だ。首長が早急に埋葬したい感情は分かるが、そんな処理はできない」
竹内はくぎを刺すように言い放った。小泉も身元確認が埋葬の大前提と承知していたが、人手不足による検視の遅れを憂慮した。
「町の人は身元を知っているのに、手続き的に検視が必要になる」。小泉は地元のジレンマを代弁した。竹内は「分かっているが、手順を踏まないわけにはいかない」と言い返した。
どちらも正論だった。
村井は手順を守って土葬する方針を示し、話題を埋葬場所の準備に変えた。小泉が重機の輸送を自衛隊に頼めないかと提案すると、竹内が再び口を挟んだ。
「あの…。申し訳ないですが(埋葬場所の)掘り起こしよりも、救助とか、優先順位の高いものがいっぱいあると思いますよ」
庁議室が一瞬、静まり返った。突き付けられたのは限られた人員や資機材を「生」と「死」のどちらに手厚く振り向けるかという厳しい選択だった。村井は「うーん」と考え込んだ。
数秒後、顔を上げて言った。「まだ72時間の前だ。優先順位は救える命を救うこと。今日1日はそれで頑張る。町にもそう伝えて」
14日午後2時46分、72時間を迎えた。人数は大きく減ったものの、その後も生存者の発見は続いた。村井はそのたび「私は諦めていない」と繰り返した。
(敬称略、肩書は当時)
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