【焦点】災害公営住宅での健康調査、10年で打ち切り 宮城県

 東日本大震災の災害公営住宅に暮らす被災者の健康調査を、宮城県が震災10年となる本年度限りで打ち切ることが分かった。一部自治体は継続を望むが、県が主導する形での調査は本年度で終わる。住環境が激変し、心身に問題を抱えがちな被災者のモニタリングに幕引きを図る姿勢に、市民団体は「支援施策を講じるデータが失われる」と危機感を強めている。
(報道部・高橋鉄男)

 調査は支援を要する被災者を把握して施策に生かすため、郵送などで実施。期間と対象は表の通り。仮設住宅への入居に合わせて県が2011年度に始め、19年度は災害公営住宅で生活する沿岸7市町の5769世帯が回答した。
 県は8月、21年度も調査を続けるか自治体に意向を確認したが、「県との共同調査への希望がなかった」として中止を決めた。県健康推進課は「通常業務や見守り支援で対応する。県も保健師らがサポートするため、決して市町に丸投げではない」と説明する。
 19年度の調査結果によると、不安や抗うつ状態に関する全般的精神健康状態(K6)の問いで、深刻な問題が発生している可能性がある「13点以上」の割合が7.6%と、国民一般の4.3%を上回った。65歳以上の高齢者の1人暮らしは34.5%に上る。
 こうした健康不安を把握するため、石巻市と仙台市は21年度も健康調査の継続を望んでいた。
 約4500世帯に調査票を送る石巻市は、21年度も独自に調査を実施する方向で検討している。市は「19年度の調査で被災者の行事参加率や体を動かす機会が減ったことが分かった。新型コロナウイルスの影響でさらに悪化している恐れがある」とフォローの必要性を指摘する。
 約3000世帯を調査する仙台市も続ける意向だ。「年数がたち、集合住宅で孤立感を深めたり健康状態が崩れたりするケースもあり得る」と懸念する。
 隣県では、東京電力福島第1原発事故を受けて県民健康調査を進める福島県が「長期的な見守りが必要」として継続する。岩手県は有識者らでつくる協議会で被災市町村の住民健診データを分析し、支援ニーズを把握している。21年度以降はこれから協議する。
 本年度末で国の「復興・創生期間」が終わり、被災者支援の財源は先細りする一方だ。各自治体で通常の保健事業による見守りに切り替えが進む中、支援の在り方が問われている。
 震災復旧・復興支援みやぎ県民センターは11月27日、宮城県に調査の継続を要望した。世話人の水戸部秀利医師(72)は「被災者全体の課題を共有する仕組みが引き続き必要になる。対象を在宅被災者らにも広げるなど調査内容も充実させるべきだ」と訴える。

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