うたの泉(1437)坂下るわれと等しき速さにて 追ひ来る冬の月の目鼻や/水原紫苑(みずはら・しおん)(1959年~)
幼い頃、私と一緒に月も歩いている! と感激した時があります。自分が動くと、月も動いて見えて。あのうれしい感情を、掲出歌は、そのまま取り込んでいます。「坂下る」という入り方が秀逸。少し速足なのでしょうか。まん丸なのか半月なのか三日月なのかを定義せず、読者それぞれが思い浮かべられる「追ひ来る」「月の目…
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