うたの泉(1440)十字架に肌(はだへ)の白く俯けり 死につつ生きて人の名はある/松本実穂(まつもと・みほ)(生年非公表)
掲出歌は、作者のフランス在住時に作られました。この歌の前には<それぞれの村にひとつの教会のやさしく建つが車窓より見ゆ>という一首が置かれています。宗教の存在が人々の生活に浸透しているのでしょう。第四句「死につつ生きて」が、うまい。肉体はないけれど、人の心の中に生き続けているもの。宗教に限らず、芸術…
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