石巻圏の新成人たち>御神楽伝承クラブ「天翔」会員

自宅でも御神楽の練習に励む高橋さん

 2011年の東日本大震災や、先が見通せない新型コロナウイルスの感染拡大など押し寄せる大きなうねりの中、明確な目標と情熱を持ち、未来を切り開こうとする若者たちがいる。苦難の時代に立ち向かい、ミレニアム世代を先駆する石巻地方の新成人の姿を紹介する。(白幡和弘)

■御神楽伝承クラブ「天翔」会員・高橋昌杜さん(20)=東松島市新東名

 東松島市の旧野蒜小4年の時に発生した東日本大震災で、2人の同級生が犠牲になった。「舞う時には、将来に夢や希望があったはずの仲間を常に思い浮かべる」。同市の旧鳴瀬地区を拠点に活動する御神楽(みかぐら)伝承クラブ「天翔」の要の舞い手として演舞する。

 御神楽との出合いは鳴瀬未来中2年の時だ。同校教諭だった制野俊弘和光大副学長が、震災翌年の2012年から指導していた。

 御神楽は、岩手県の伝統芸能の南部神楽がベースだ。扇とともに持つ錫杖(しゃくじょう)は神様を呼ぶのが本来の解釈だが、「大切な人を胸に、鎮魂の思いで自由に舞ってもいい」という制野さんの教えに心が突き動かされた。

 習い始めたころ、生徒会長に就いた。震災で同級生が犠牲になり、家族を亡くした友人もいる。多くの市民が命を落とした。生徒たちの動揺は続いた。

 「みんなで何か打ち込むものがほしい」。御神楽に触れ、足の運びや腰の沈ませ方、扇の回しといった地味な基本動作の習熟に躍起になった。同級生たちの表情が輝き始めた。御神楽を学ぶことで互いの気持ちが通じ合えると確信した。習得した舞いを文化祭で披露した。心が一つになった瞬間だった。

 鳴瀬未来中での活動はその後、途絶えてしまったが、18年に御神楽を継承する芸能団体として10代から40代まで27人のメンバーで天翔が発足。東北学院大工学部に通う高橋さんと、中学時代の同級生8人が舞い手として加わった。

 昨年10月、天翔の活動発表会が地元の宮野森小体育館であり、「鶏舞」「荒崩し」を演じた。主催した野蒜まちづくり協議会の渡辺英人教育福祉部会長は「人のつながりを築く上でも大切な活動だ。地域として支援したい」と約束する。

 歩み始めたばかりだが、新型コロナウイルスの感染拡大で各種イベントは開催が見送られ、御神楽を披露する機会が減った。やるせなさが募る。

 苦難の時だからこそ思うことがある。「震災復興はまだ道半ばだ。これからは『心の復興』が重要になる。伝統芸能の流れをくむ『天翔』は心のよりどころとなり、居場所づくりにもなる。小中学生に関心を持ってもらえるように活動を進め、東松島市の未来へとつないでいきたい」

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