SNSのチカラ 多彩な切り口で情報発信 石巻地方
石巻でも会員制交流サイト(SNS)のツイッター(Twitter)やインスタグラム(Iinstagram)などを活用し、地域の情報や商品のPR、コミュニケーションなどに取り組む人々がいる。多様な切り口で、さまざまな工夫を凝らす姿を紹介する。
■航空自衛隊松島基地広報班/格好良さ伝えたい
航空自衛隊松島基地(東松島市)の公式ツイッターアカウントは、曲技飛行チーム「ブルーインパルス」をはじめ、基地所属の航空機や隊員などを写真や動画で紹介する。広報班の山名奈緒美さん(41)は「自衛隊にあまり関心のない人にも、格好良さが伝わる投稿を心掛けている」と話す。
フォロワー数は約8万人。同様の空自基地のアカウントの中でもトップを誇る。訓練飛行やパイロットに焦点を当てた動画や写真が多くの反響を集める。基地広報班の隊員2人が撮影を担当している。
広報班に配属されて約1年半になる山名さんが運営の中心を担う。特に動画の撮影と編集に注力。スマートフォンから繰り出す大胆なカメラワークは見る人を飽きさせない。「始めは航空機のことは何も分からなかった。整備士やパイロットと触れ合う中で、徐々に格好良さに気付いていった」と語る。
ブルーインパルスの整備士を20年以上務めた大竹慎一さん(54)が山名さんをサポートする。機体の隅々まで知り尽くす整備士ならではの視点で動画制作に助言する。ベテランカメラマンでもあり、飛行中の「ここぞ」の瞬間を切り取る。写真は山名さんの動画にも挿し込まれ、多くのファンを引きつける。
「やるからにはフォロワー日本一を目指してほしい」。とある整備士の言葉が山名さんの原点だ。「パイロットはもちろん、それを支える隊員たちプロフェッショナルの姿は本当に格好良い。一人一人の魅力を多くの人に知ってもらうために発信していく」。山名さんは目を輝かせた。
■木の屋石巻水産/店の復興見てほしい
石巻市魚町1丁目の水産加工会社「木の屋石巻水産」で広報を担当する松友倫人さん(40)はSNSを活用し、消費者と直接つながるビジネスモデルを推し進める。狙いは「木の屋のものづくりに共感してくれる人に見つけてもらうこと」。震災から10年の節目を見据えた発信にも取り組む。
インスタグラムで自社商品を使う料理のレシピを紹介する。「缶詰とバレないレシピ」と銘打ちアップするメニューは色鮮やかで、どれも食欲をそそるものばかりだ。
10月には動画投稿サイトユーチューブで配信イベント「オンライン缶謝祭」を開催。工場見学や抽選会、時間限定の特別セールなどをライブ中継した。「SNSでは販売店を飛び越して消費者に商品の良さを直接伝えられる。食生活や価値観が多様化するこれからはいかに見つけてもらうかが課題だ」と先を見据える。
ツイッターで「震災から10年を100日で」と題した企画を立ち上げた。昨年12月1日から震災10年となる3月11日まで、100回に分けて文章や当時の写真を投稿。復興の歩みを回顧する。津波で本社工場が全壊し商品が流されたが、多くの企業や人々の支援を受け再起を果たした。
松友さんは「企業として震災との向き合い方を模索してきた。10年目を転換期として、元気になった今の姿を助けてくれた人たちに伝えたい」と語る。
■石巻魂(市内40代自営業)/「正しい情報」心掛け
「AMラジオで安否確認が流れましたのでツイートします」。最初の投稿は東日本大震災直後の3月18日。友人の安否を確かめるためにアカウントを立ち上げた。現在は県や報道機関の新型コロナウイルス関連情報を拡散する。地域の発信者として約1800人にフォローされている。
運営するのは石巻市の40代自営業者。震災直後はツイッターで情報収集しながら、客や知人から伝えられる各地の情報を自ら投稿。炊き出しや給水所、飲食店などの営業時間に加え、全国から届く支援物資の窓口にも名乗り出た。
物資を避難所や小学校に届ける中、日本中から訪れたボランティアとつながりが生まれた。発信を続けるのは、石巻を離れたボランティアに現状を伝えるためだ。営業を再開した店や変わりゆく風景…。復興の歩みを伝え続けた。
震災から10年を節目に、投稿をやめようかと考えていた。しかし石巻をコロナ禍が襲った。店の客が口々に全く異なるうわさ話をするのを目の当たりにし、少しでも正しい情報を広めようと決断。これまで応援してきた飲食店のデリバリー情報や、日々の感染状況などに内容を切り替えた。
繊細な情報を扱う毎日。一時はSNS疲れにも悩まされた。それでも「いつかは復興の進んだ風景や、おいしいグルメなどの写真を投稿できるようになってほしい。安心して手放せるようになるまでは発信を続ける」と使命感を語った。
■いしのまき観光大使・萌江さん/地元の魅力アピール
石巻市出身のシンガー・ソングライター萌江さんは、いしのまき観光大使として石巻の魅力を発信している。「もしほやに生まれ変わったら、ほや酢として食べられたい」。インスタグラムの初投稿では大好物のホヤへの思いをつづった。
意識してSNSを使い始めたのはつい最近。ファンとより密接につながるためのツールとして使いこなしている。
背景には新型コロナウイルスの影響があった。年間約140回あった週末のイベントなどの活動が1割ほどに落ち込んだ。同時にファンと関わる機会も減ってしまったため、SNSを活動の場に加えた。
自身を身近に感じてもらえるよう、ツイッターでは日常の出来事や日々の活動を小まめに投稿。インスタグラムでは投稿が24時間限定で表示される「ストーリー機能」を駆使する。絵文字やスタンプひとつで投稿に反応できるため、気軽にフォロワーとコミュニケーションをするのが狙いだ。
昨年12月にリリースした新アルバムは、インターネットで支援を募るクラウドファンディングを活用して制作した。地元や県内の人だけではなく、全国からの応援が集まった。
萌江さんは「SNSを使えば日本中の人に石巻の魅力やグルメを知ってもらえる。いつか多くの人に来てもらえるよう、観光大使として精いっぱいPRしていきたい」と意気込む。
※ツイッター:140字以内の文章に、写真や動画などを添付してネット上に投稿できる。気になる相手の名義(アカウント)を登録(フォロー)することで、相手の投稿をリアルタイムで自分の画面に表示することができる。
※インスタグラム:写真や動画の投稿に特化したサービス。最大10枚までの写真や機能ごとに15秒~60分の動画に文章を付けて投稿、共有ができる。アプリケーション内で写真や動画を簡単に加工することもできる。