社説(1/14):元慰安婦訴訟判決/日韓合意に立ち戻り解決を

 韓国の司法は、国際法の原則や国家間の信義をどう考えているのか。日韓関係をますます悪化させる判決と言わざるを得ない。
 韓国のソウル中央地裁が、旧日本軍の元従軍慰安婦の女性12人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、請求通り1人1億ウォン(約950万円)の支払いを命じた。
 韓国の最高裁は2018年、元徴用工訴訟で日本の民間企業に賠償を命じている。今回は日本政府を対象とするのが異なる点だ。
 国際法には、国家は他国の裁判権に服さないという「主権免除」の原則がある。明文化されていないが、慣行として定着した「国際慣習法」に位置付けられる。
 日本政府はこの原則に基づいて訴訟に関与することを拒んだ。だが、地裁は元慰安婦が「反人道的犯罪行為」の被害を受けており、主権免除は適用できないと判断した。
 日本と韓国は1965年、国交正常化の際に日韓請求権協定を結んでいる。日本が韓国に無償3億ドル、有償2億ドルの経済援助を約束する一方、両国と国民の請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記する。
 慰安婦問題では2015年の政府間合意がある。日本政府が責任を認めて当時の安倍晋三首相が「おわびと反省」を表明。両国は「最終的かつ不可逆的な解決」をうたい、日本は元慰安婦らを支援する韓国の財団に10億円を拠出している。
 判決は、それでも元慰安婦の賠償請求権は消滅していないとみなした。特に15年合意は「国と国との政治的な合意があったことを宣言したにすぎない」とまで述べている。
 韓国内には請求権協定や政府間合意に根強い不満がある。しかし、国と国との合意は重く、簡単に覆せるものではない。韓国の司法は世論に迎合しているようにも見える。
 日本政府はこのまま訴訟に関与せず、控訴もしない方針だ。韓国政府には国際法違反を是正する措置を早急に講じるよう求めた。当然だろう。
 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は徴用工判決の際と同じく、司法の判断を尊重する姿勢を示す。
 文政権は今月、駐日大使に「日本通」で韓日議員連盟の姜昌一(カンチャンイル)前会長を起用するなど、日韓関係の打開を模索する気配を見せていた。
 そこへ新たな司法判断が出た。三権分立の建前から司法に介入できず、かといって日本に低姿勢で臨めば世論が許さない。追い込まれているとも言える。
 判決は仮執行も認めており、原告は日本政府資産の差し押さえ手続きを取ることもできる。現状を放置すれば、後戻りできないほどの関係悪化を招くことは必至だ。
 文政権がなすべきことは、まず日韓合意の原点に立ち戻ることだ。その上で、元慰安婦や元徴用工ら被害者の説得と救済に乗り出すべきだ。

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