閉じる

震災時小学6年の石巻専修大生2人、今春教員に 命の大切さ伝える決意

先輩教員に授業内容を教えてもらう小指さん
児童たちと笑顔で会話する熊谷さん

 東日本大震災当時、小学6年生だった石巻専修大人間学部人間教育学科4年の小指(おざし)有沙さん(22)と熊谷拓哉さん(22)が県教員採用試験(小学校)に合格し、今春、夢だった教壇に立つ。小指さんは石巻市大街道小、熊谷さんは同市釜小の出身。震災では、ともに自宅が全壊し、中学校は転校を経験した。1月18~20日にはそれぞれの母校で教職実践に臨んだ。子どもたちと向き合いながら、命の大切さを伝えていく。

■大街道小出身、小指有沙さん(22) 

 小さいときから、友人や近所の年下の子に勉強を教えるのが好きだった。教師を志したきっかけは震災。動揺する児童たちに寄り添う教師の姿を見て、憧れが芽生えた。

 石巻市南浜町の自宅、大街道南の祖父母の家は震災で全壊した。蛇田地区の親戚宅に引っ越すことになり、転校を余儀なくされた。心細かった自分を支えてくれたのは当時の担任。グループの輪に入れるよう声を掛けてくれた。

 高校は石巻好文館に進学し、吹奏楽部の部長を務めた。指導した後輩が吹けるようになったことに喜びを感じ、「教えることを仕事にしたい」と教職の道に進むことを決意した。小学生時代の被災経験から、「自分の命は自分で守れる子どもを育てたい」と、小学校教員を選んだ。

 震災から間もなく10年。被災したからこそ、伝えられることもある。「これから出会っていく子どもたちは震災を知らない世代。震災の大変さやつらさのリアルを知ってもらうことで、自分の命を大切にしたいと気付かせたい」。未来を担う子どもたちに、震災からの日々や経験を語り継ぐ決意をにじませる。

 「私はつらいときや迷ったとき、先生の言葉に助けられてきた。私も子どもたちにとって、人生のきっかけの一つになれるような先生になりたい」

■釜小出身、熊谷拓哉さん(22) 

 2011年の東日本大震災と16年の熊本地震。大災害を2度経験した。「生きたくても命を落としてしまうという出来事があった。子どもたちには日常的に命の大切さを伝えていきたい」と力を込める。

 震災で石巻市新館2丁目にあった自宅は全壊。通う青葉中で避難生活を送りながら授業を受け、5月に熊本県へ転校。慣れない環境に戸惑ったが、担任が熱心に対応してくれ、教師に憧れた。

 高校生になり別の職業にも興味を持った自分に、教頭先生が放課後を使って勉強を教えてくれた。その姿に感化され、やはり教師になろうと決めた。高校3年のときに熊本地震が発生。自宅アパートは無事だったが、近所で瓦やブロック塀が崩れたり、ガス漏れが起きたりした。「災害はどこでも起こりうる」。改めて気付かされた。

 教師を目指すなら古里で学びたいと考え、石巻専修大に進学。「子どもたちと一緒に過ごす時間が長い」と小学校教員を選んだ。母校の釜小で臨んだ教育実習最終日。担当した6年生がお別れ会に「熊ちゃんフェス」を開いてくれた。うれしくて涙があふれた。

 たくさんの後押しを受けて、教職の道を歩み始める。「子どもたちを理解し、子どもたちのために動くという基本中の基本に、まずはしっかり取り組みたい」

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告、休刊日などについては、こちらのサイトをご覧ください

ライブカメラ