「復興再考」第8部 なりわい(3) インタビュー 東日本大震災事業者再生支援機構・松崎孝夫社長

[まつざき・たかお]早大卒。1979年日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。新生銀行常務執行役員法人営業本部長、東日本大震災事業者再生支援機構常務などを経て2016年4月から現職。福島県三春町出身。

 被災企業の二重ローン対策を担う東日本大震災事業者再生支援機構(仙台市)は2012年に発足した。昨年12月末時点の支援決定件数は744件で、買い取り債権の元本総額は1323億円、債務免除総額は660億円。今年3月末に新規案件に対する支援決定の期限を迎えるに当たり、松崎孝夫社長(65)に話を聞いた。

 -支援決定期限を控え、評価は。

 「小規模事業者の再生は初めての取り組みだった。震災翌年から件数をここまで上げられたのは成果だ。評価にはもう少し時間がかかるが、復興に向けた手だての一つにはなった」

 -これまでの支援完了は決定件数の約2割(186件)にとどまる。

 「大企業と異なり、小規模事業者の財務体質が良くなり、収益力が生まれる絵を描くには10年超かかる。むしろ金融緩和により前倒しで支援完了した会社が多い印象で、遅れているイメージはない」

 -平時の融資と同様に金融機関の意向が強く反映され、「助けにならなかった」との声も聞かれる。

 「金融機関が通常ベースで考えていたという点は明確に違う。債権を売却して再生させる姿勢が金融機関にあった。震災直後、すぐに再生計画が作れないのは当然で、震災前をベースに約7割の売り上げで済む再生計画を立てた」

 「『どうしたらやれるか考える』という発想で取り組んできた。企業に対して2回、3回とヒアリングを重ね、見通しが立った企業は広く支援している。漏れた企業があるとすれば、反省しなければいけない」

 -支援完了の中には、自己破産や廃業したケースもある。

 「震災後に台風などの被害で計画通りにならず、事業者の心が折れることもあった。債権をカットしたところに、近年の自然災害、そして新型コロナウイルスと根雪のように借入金が増えているのが実態だ」

 -今後の支援は。

 「新規の支援決定が一段落した15年後半から、経営相談や商談会などの本業支援に取り組んできた。新型コロナの影響もあり、売上高を上げるための策がなければ運転資金が回らない」

 「企業は新型コロナの補助金申請など多くのことに困っている。見守り医のように、財務面以外でもいつでも相談に乗れる態勢を構築していく」

 -全国で大規模な自然災害が相次ぐ。

 「震災で(各県の産業復興機構と)二重ローンの買い取り機関が二つあったのは非効率だった。支援機構の発足が遅かった反省から、熊本地震などでは早期に支援組織が作られ、地域金融機関との連携も図れた。金融面では相当早く準備できるようになった。小規模事業者を公的機関で支援することは、今後も必要だ」

河北新報のメルマガ登録はこちら
震災10年 復興再考

 東日本大震災は命、暮らし、教育、社会の在りようを根底から問い直した。私たちが目指した「復興」とは何だったのか。政府の復興期間の節目となる震災10年に向け、その意味を考えたい。

震災10年 復興再考

震災10年 あの日から

復興の歩み

秋季高校野球東北大会 勝ち上がり▶


企画特集

先頭に戻る