石巻地方・退職校長、思いを語る(上) 湊小、大谷地小

 今月末、石巻地方の小学校5校と中学校3校の校長が定年退職する。長年にわたる教員生活を振り返り、学校づくりや教育に対する思い、今後の期待などを取材に応じた先生たちに聞いた。


◇湊小・坂本忠厚さん/本物に触れる体験重視

 37年に及ぶ教員生活のうち、最も印象に残っているのは校長として学校経営に携わった湊小での2年間だった。さまざまな分野で児童が体験する機会を数多く設け、未知の世界に憧れを抱く子どもの心にやる気の火をともし続けた。

 「本物に触れる体験を通して、一つでも子どもが関心を示し、生活する意欲が生まれるのではないかと考えた。できた喜び、できなかった悔しさ、全てが成長の糧になったと思う」

 女川町出身。都留文科大初等教育学科卒。船越小で教員生活をスタート。その後、河北地区教委、石巻市教委で社会教育主事を計6年務めた経験が、湊小での魅力ある学校づくりに生きている。

 「学校を離れて外から見ることで教育に求められていることや、地域や外部の人材を活用すること、子どもたちに体験から学ばせることの大切さを考える機会になった」と言う。

 2020年度は「子どもが通いたい、親にとっては通わせたい、地域にとっては残したい学校」を湊小の目標に掲げ、体験した後のフォローや保護者への積極的な情報発信も進めた。

 モットーは(1)教員は生きる教材として子どもの前に立つ(2)時代のニーズに合わせて変化に対応する力量を磨く-。

 「子どもが成長する姿を間近で見られることが教師のやりがい」と語り、後進に期待する。

 児童たちには「夢を持ち、個性や能力を生かして前へ進めるような人になってほしい」と願う。


◇大谷地小・高橋徳子さん/「仏様の指」を心掛ける

 出身地である塩釜市のほか富谷市などの11校に赴いた。石巻地方は、2019年に着任した大谷地小が初めて。印象に残るのは、同校で60年以上続く児童の自転車通学だ。通学班を組み、上級生が下級生の面倒を見ながら登校する。

 「途中でけがをした子がいれば上級生が知らせにきてくれるなど、優しさが受け継がれている。地域の皆さんの見守りや保護者のサポート、連携も素晴らしい」と感心する。

 昨年は新型コロナウイルスの影響で運動会を中止にするか何度も話し合い、保護者らの協力を得て実現できたことも思い出深い。

 独創的な国語教育で知られる故大村はま氏の著書にあった「仏様の指」のような存在でいることを心掛けてきた。

 子どもたちがつまずいた時、気付かれないようにそっとサポートする。「自分でできたんだと達成感を持たせ、次に進む意欲を育む。子どもたちが自分の力で成長できるよう、環境整備や下準備を大切にした」と振り返る。

 学級担任時代、1年の終わりに児童から言われてうれしい言葉は「先生のクラスでよかった」ではなく「楽しいクラスだった」。「児童が自分たちで考え、判断し、実行できる学級だった証。最後にそう思ってもらえたら最高だった」と目を細める。

 「楽しいことが起きない日はなく、幸せな教員生活だった。お世話になった全ての方に感謝している。学校教育をずっと応援していく」とほほ笑んだ。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告、休刊日などについては、こちらのサイトをご覧ください
先頭に戻る