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田代島獅子舞を次代へ 保存会、教本とDVD再制作

復元した教本と、DVDを持つ尾形会長

 石巻市の田代島に250年以上前から伝わる「田代島獅子舞」を後世に残そうと、同市田代島獅子舞保存会(尾形勝寿会長)が東日本大震災で失われた教本とDVDを一部リニューアルして再発行した。女性が獅子を操る全国でも珍しい獅子舞で、現在は石巻中の生徒が伝承している。着付けから演奏、舞い方を実演で伝える映像と写真は、田代島の文化を次世代に手渡す貴重な資料となる。

 新たなDVDには、伝承活動をする石巻中生徒や田代島出身の女性による実演が、全体演奏、獅子の舞い方、大太鼓、小太鼓、笛ごとの演奏がクリアに聞こえる音声と映像、着付けの仕方などが約1時間収録されている。

 教本はA4判20ページ。笛が奏でる旋律の楽譜、ばちの持ち方からたたき方などを写真入りで解説した太鼓演奏の仕方、獅子の演技、おはやしの入れ方までが網羅されている。DVDと合わせて、田代島獅子舞の特徴を詳細に知ることができる。

 DVD、教本とも200部制作し、伝承に取り組む石巻中をはじめ、市役所、各総合支所、公民館、市内小中高全校などに配布した。再制作には石巻市地域づくり基金助成金を活用し、いしのまきNPOセンターが支援した。

 以前のDVDと教本は石巻市同市門脇町5丁目にあった尾形会長(76)の自宅に保管されていたが津波と火災で喪失した。その後、半分焼け残った教本が見つかり、DVDのデータも市役所に保存されていることを知った尾形会長が、保存会メンバーとともに再制作作業を続けてきた。

 尾形会長は「島で代々、口伝で引き継がれてきたが、島民が減り、さらに高齢化が進む中、きちんとした形で伝承する必要があった。震災から10年、再発行できたことに感謝している」と話す。

 田代島獅子舞は、1989年に田代中が閉校し、獅子舞に取り組んでいた生徒が石巻中に転校してきたことで、同中が引き継いだ。毎年、文化祭で披露してきたが、震災で2年間中止になったが2013年に復活。しかし昨年秋には新型コロナウイルス禍で再び中止になった。

 尾形会長は「今秋には再び、伝承されていく舞いを見たい」と心待ちにしている。

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