原発処理水海洋放出「あまりにも唐突」 反対、不満の声相次ぐ 石巻地方
政府は13日、東京電力福島第1原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の処分に関し、2年後をめどに同原発で海洋放出を開始するとの基本方針を決定した。新型コロナウイルス感染症の影響などで水産物の消費低迷が続く石巻地方の漁業関係者からは風評被害を心配する声や不満の声が相次いでいる。
県漁協経営管理委員会の前会長で、ノリ養殖に携わる丹野一雄さん(73)は「生産者の一人として絶対に反対。2年後とはいえ、風評被害が懸念され、大打撃を受けるのは必至だ」と強調する。今後、県漁協など関係機関挙げて、関係省庁などへの要望活動の必要性も訴えた。
石巻魚市場の佐々木茂樹社長は、東日本大震災発生から10年が過ぎた中での決定に「なぜこの時期にというのが正直な感想。あまりにも唐突で政府に対して不信感が強まる」と語る。
「世界にしっかりと安全・安心が証明できて、どの国からも認められてから議論する話だと思う。風評被害の再燃も考えられ、宮城や福島などの水産物が売れなくなる事態が起きると、漁業者の生活に影響する」と懸念を示す。
県漁協谷川支所青年部の前部会長で、個人、青年部合わせると年間50トン前後のホヤを水揚げする渥美政雄さん(43)も「とにかく風評被害が心配。海洋へ流してほしくないというのが本音」と語る。
3月初旬から始まった今シーズンのホヤ漁。「成育も順調で出来栄えも良い」(渥美さん)と言う。それでも新型コロナが暗い影を落とし、昨年から売れ残り状態が続く。
渥美さんは「こうしたマイナスイメージが先行するようなことが続けば、海で仕事をする後継者はいなくなる」とも付け加えた。
震災前は、県産ホヤの7~8割は韓国で消費されていたが、原発事故の影響でいまだに宮城や福島など8県産の水産物輸入禁止措置の厳しい状況が続く。
今回の決定について、韓国は「絶対に容認できない措置」と表明する一方、輸入禁止措置の拡大を検討するなど反発している。