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物言いたげな能面「持ち主の元に返したい」 震災後拾う 石巻

能面を手にする井上さん

 見つめていると、何か言いたげな口元をしている。東日本大震災から10年が過ぎた3月12日。石巻市南光町の日本製紙石巻工場構内にある丹野工業石巻支店の事務所から一つの能面が出てきた。聞くと、震災発生から1カ月ほどたった時、泥にまみれた面を従業員の一人が事務所近くで拾い上げたものだという。

 「誰もがすっかり(存在を)忘れていた。たまたま事務所の片付けをした日に10年ぶりに見つかった」と話すのは同支店安全担当の井上真市さん(68)。「捨てるのも忍びない。津波で被災した近隣の住宅にあったものではないか」と推し量る。「できれば持ち主の元に返したい」

 面を持ってみると軽く、割れも欠けもない。材の良さが感じられる。鼻の穴の大きさ、形も左右で微妙に違う。手彫りなのは間違いなさそうだ。

 「10年がたった翌日に再び現れた。何か意味があるのではと考えてしまう」と井上さん。連絡を待つ。(山)

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