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石巻市長選 4候補の訴えと横顔

長 純一氏
勝沼 栄明氏
阿部 和芳氏
斎藤 正美氏

 18日に告示された石巻市長選は、立候補した4氏が25日の投開票に向け舌戦を繰り広げている。各候補の横顔と訴えを紹介する。(届け出順)

■長 純一氏(54)医師 無新
〔ちょう・じゅんいち 1966年6月、東京都生まれ。信州大医学部卒。佐久総合病院に19年勤務。2月まで市包括ケアセンター所長。石巻市中里4丁目で妻、長女と暮らす〕

<医療経験生かし命守る>

 止まらぬ新型コロナウイルスの感染拡大や、医師が次々と辞めていく市立病院の現況に危機感を抱いた。「医師と行政での経験を生かし、市民の命を守りたい」と、市長選への挑戦を決意。コロナ対策のほか、地域包括ケア推進や反原発などを公約に盛り込んだ。

 震災時に長野県医療団長として石巻入りし、継続した支援の必要性を感じて2012年5月、市立病院開成仮診療所長に就任。被災者支援や地域包括ケアの仕組みづくりに携わり、行政と現場のパイプ役を担った。

 一方で、行政の縦割りの仕組みにもどかしさも感じた。「施策を提案したが、ほとんどが実現できなかった。縦割りを無くし、人々の暮らしを立て直す」と行政改革にも意欲を燃やす。

 地域に寄り添い、仮診療所長時代は、仮設住宅団地の世話役からの電話に24時間365日対応。高齢者施設から入所者の最期のみとりを依頼されれば、夜中でも片道30キロ以上を運転して可能な限り駆けつけた。

 性格を「我慢強い」と自己分析する。普段は無口だが「ため込んでからしゃべり出すので、難しい、理屈っぽいと言われる」と苦笑する。学生時代に力を入れた囲碁は六段の腕前。

■勝沼 栄明氏(46)元衆院議員 無新
〔かつぬま・しげあき 1974年11月、横浜市生まれ。北大医学部卒。2012年衆院選比例北海道で初当選。14年宮城5区から立候補し比例東北で復活当選。石巻市中央1丁目〕

<弱者に優しいまち築く>

 「弱者に優しく、頑張る人がより頑張れるまちをつくる」。トップリーダーの覚悟として10年、20年後を見据えたビジョンを語る。

 目指す市長像として「ピラミッドの頂点ではなく、サークルの中心、市民と双方向の関係」を強調し、発信力の強化や積極的な情報公開を目指す。

 防災や人口減少など市町独自で解決できない課題に直面しており「自治体間が助け合う広域行政の仕組みをつくる。人材、物、住民交流を重ね、県北第一の都市として発展させる」。

 2005年4月の1市6町の合併から16年がたつ。「市全体の一体感が醸成されていない。各総合支所の予算、人員を増やし、権限を強化する」

 独自の抗原検査の実施など新型コロナウイルス感染拡大対策に注力し「いち早くコロナ禍から脱却する」。高校生までの医療費無償化や公設民営での市図書館整備も公約に掲げる。

 衆院議員を2度務め「国とパイプがある」と即戦力をアピールする。「新しい古里で市民と石巻の未来のために力を尽くす」。

 医師。趣味は読書、テニス、スノーボード。座右の銘は「外柔内剛」。尊敬する人は後藤新平。

■阿部 和芳氏(61)元市議 無新
〔あべ・かずよし 1960年2月、石巻市生まれ。千葉商科大商経学部卒。旧石巻市議を含め市議6期。石巻市小積浜の自宅で妻、長女、母親、祖母の5人暮らし〕

<市民のための市政実現>

 「市民に寄り添い、市民のための市政を実現する」。東日本大震災からの再生に向け、公約に「稼げる街」「にぎわう街」「備える街」の3本柱を掲げた。

 旧石巻市を含め市議として6回の当選を果たし、市政に携わった。次点だった前回、前々回に続く挑戦。2度の市長選を経た6期目は、市長になったつもりで施策への対案を提示してきたが、「人に優しく命を大事にする行政をつくるには、執行権が必要」と3度目の出馬を決めた。

 2019年10月の台風19号では約1カ月半かけて被災地を回った。信条は現場主義。市長として必要な部分だと感じている。「歩くといろいろな話を聞ける。判断するには自分の耳、目で確認することが大事だ」と話す。

 「誰もが健康で住んで良かったと思える街」を目指す。新型コロナウイルス対策や医療福祉への対応には、これまで培った人脈やネットワークを活用する考えだ。地元小積浜地区は幾度も津波被害に見舞われた土地で、防災減災への思いもひときわ強い。

 座右の銘は「耕不盡(こうふじん)(耕せども尽きず)」。趣味は書道や仏像鑑賞。「神仏が大好き。心が洗われる」という。

■斎藤 正美氏(66)元県議 無新(自・立推)
〔さいとう・まさみ 1954年12月、石巻市生まれ。日大工学部卒。84年に旧石巻市議初当選。87年から県議通算7期。石巻市恵み野1丁目で妻と長男、長女夫婦、孫2人と暮らす〕

<誇れるまちづくり使命>

 東日本大震災からの復興完結が見えたところに、新型コロナウイルス禍が襲った。「誰もが誇れる石巻市をつくることが自分の使命だ」。県議会副議長を辞して立候補した決意を語る。

 29歳で旧石巻市議になった。県議を通算7期務め、国政にも3度挑戦。豊富な政治経験で築いた人脈があり、菅義偉首相にも電話で出馬を報告し、激励されたという。知事や東松島市長、女川町長との連携に自信を見せる。「石巻圏域でスクラムを組んで国や県に要望していく」

 新型コロナで打撃を受ける地域経済の立て直しを最優先事項に掲げる。「飲食業以外にも大変な業種が多くある。リサーチし、支援していく」と強調する。

 市は人口減少が急速に進む。若い世代の定住促進を目指し、若者からまちづくりへの意見を直接聞く機会を設ける計画。スポーツや堤防が整備された北上川を生かしたイベントを積極的に開き、交流人口拡大も目指す。

 「己を忘れ他を利するは慈悲の極みなり」が政治家としての原点。剣道5段で、石巻剣道連盟会長を務める。趣味はシャンソンや五行歌。愛犬との朝の散歩を日課にする。

【遊説日程(21日)】
■長純一陣営
 ▽選挙カー=河北、北上、河南
■勝沼栄明陣営
 ▽選挙カー=桃生、河北、駅前北、中央、山の手、貞山、大街道
■阿部和芳陣営
 ▽選挙カー=日和が丘、南光町、門脇、蛇田
■斎藤正美陣営
 ▽選挙カー=雄勝、河北、稲井、中央

◇私の一票

<安心安全求める> 木村勝さん(77)=無職、石巻市開北3丁目
 東日本大震災から10年が過ぎたが、安心、安全で住みやすい地域社会の実現のための施策を着実に進めてほしい。震災の教訓を忘れず、各自治会や町内会では備蓄品や避難訓練などをしている。

 高齢化に伴いさまざまな問題も出るが、そうした声を吸い上げる市政であってほしい。ようやく複合文化施設が完成した。市民が活発に利用ができるよう、後押し、工夫をしてほしい。

<医療体制維持を> 水越研二さん(70)=宿泊業、石巻市網地浜
 離島に住む者として、網小医院の存続をいの一番にお願いしたい。

 観光面、漁業面、治安の点でも島内に一定数の人が住むことが大切で、その命を守る医療体制の維持は不可欠だ。

 加えて新型コロナウイルス感染症が離島で発生した場合の具体的な対応が示されていない。新トップには速やかに取り組んでもらいたい。感染症対策は離島にとって、より切実な問題と理解してほしい。

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