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街中ほっこり「今日の黒板」 石巻の靴店店長、店頭で描き続け4年

黒板にメッセージを描き込む新柵店長。後ろは「黒板ファン」の新田さん
皆既月食を知らせる26日の黒板
年末の開放感を感じさせるメッセージ=17年12月

 「そろそろ梅雨入り。晴れ間を活用して」「本日はどんと祭です」-。石巻市立町2丁目の「リーガルシューズ石巻店」の店先に、道行く人へのメッセージとイラストが描かれた小さな黒板型の看板がある。描いているのは新柵(しんさく)ひろ子店長(49)。4年前から毎日、描き続ける。数え始めてから26日で963作目、累計で1500作を超える。「黒板ファン」も生まれ、街のにぎわい創出にも一役買っている。

 営業が始まる午前10時、店先に置いた黒板にチョークで描く。季節の話題や地域の情報、自身の心のつぶやきといった内容で、店の宣伝はほぼない。「なるほど」と共感したり、くすりと笑えたりと何が描いてあるのか楽しみになる。

 カラスのふん害で連日掃除に追われた今年の冬には、当時の心境をコミカルなイラストで表現。26日は同日夜の「皆既月食とスーパームーン」を紹介し「石巻の空でも見られるかな」と発信した。

 きっかけは2016年秋に石巻で行われたスマートフォン向け人気ゲーム「ポケモンGO」のイベント。全国から人が詰め掛け、店の前の道路は混雑。座り込む人もいて、当初は「商品が売れる訳でもない」と悔しい思いをした。「素通りされてなるものか」と奮い立ち、集客につなげる「勝負」として思いついたのが手書き看板だ。

 イベント期間中、毎日内容を変え、歓迎の気持ちや観光案内などを書き込んだ。口コミで存在が広がり、店を訪れて情報を求める人や、歩き回るためにと靴を買う人もいた。

 「店に『動き』が出た。通り掛かる人と話すきっかけにもなる」と効果を実感。17年2月に「今日の黒板」としてスタートさせた。画像はフェイスブックなどにも掲載し、地元の魅力発信にも役立てる。

 「黒板ファン」もいる。同市中央2丁目の70代の主婦、新田貞子さんは「世間話をしているような感覚でほっこりする」、近くのメガネ店販売員、相沢陽子さん(56)は「刺激を受け、自店を紹介するチラシを手作りした」と話す。石巻観光大使の落語家林家たい平さんは、ブログで黒板を紹介している。

 店がJR石巻駅前にあり、町のにぎわいを担っているという自負もある。「描くのがつらくなることもあるが、応援してくれる人がいて励みになる」と話し、きょうも黒板と向き合う。

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