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津波の跡で 災害危険区域3167㌶―活用の道(2) 集いの場 官民、街存続へ種まく

住民が造り上げた「雄勝ローズファクトリーガーデン」(右下)。周辺にガーデンパークが整備される

 土とコンクリートに覆われた被災跡地を花と緑で彩る官民連携の計画が本年度、本格的に動きだす。

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた石巻市雄勝地区中心部の「雄勝ガーデンパーク構想」だ。観光庭園「雄勝ローズファクトリーガーデン」を運営する一般社団法人「雄勝花物語」と市雄勝総合支所などが2017年5月、3年がかりで構想をまとめた。

 市が買い取った移転元地約20ヘクタールに木や花を植え、ガーデンを中心に一帯を庭園化する。市民農園や散策路、パークゴルフ場などを配置し、交流を生む。市が農地や広場を造成し、住民やボランティアが花畑や農園の整備を担う。

<新しい産業必要>

 雄勝地区の人口は震災前の4分の1まで減った。構想は、まちづくりの担い手となる若者を呼び込む狙いもある。花物語の徳水博志共同代表(67)は「地域を存続させるには新しい産業を興すしかない」と強調する。

 パーク内では、市が各地の津波跡地を活用して特産品化を目指す「北限のオリーブ」を既に育てる。オイルや塩漬けなどに加工し、数年内の収益化を目指す。野菜やワイン用のブドウなどの栽培も計画。宿泊場所のシェアハウス建設も視野に入れる。

 管理・運営には花物語を含む地域の5団体が参画する。徳水代表は「街を残したいという住民の思いが行政との連携を実現させた。元地活用の先進例として沿岸半島部に広めたい」と先を見据える。

<鎮魂と復興象徴>

 雄勝地区では住民主導で跡地利用を模索してきた一方、石巻市南浜・門脇町地区には国と県、市が追悼と伝承の場として「石巻南浜津波復興祈念公園」を整備した。

 中核施設の津波伝承館は、震災の記憶と教訓を映像などで伝える。園内には4・1ヘクタールの人工池や高さ10メートルの築山を造成。「祈りの場」として約700平方メートルの円形広場を配置した。鎮魂と復興の象徴的な空間になった。

 跡地のほとんどが生かされたが、住民の感情は複雑だ。「昔の風景とは全く変わった」。南浜地区で57年間暮らした同市のぞみ野の高橋政樹さん(66)は開園後何度も足を運び、広大な公園の中にかつての面影を探す。

 語り部として地区の歴史を伝える高橋さんは「せめて震災を風化させないよう、多くの人が集う場所になってほしい」と願う。

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