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「石巻学」第6号を発刊 海を渡った先人、歴史にスポット

「海を渡った人々」を特集した「石巻学」第6号の表紙

 石巻学プロジェクト(代表・大島幹雄さん)による地域誌「石巻学」の第6号が8月20日、発行された。特集は「海を渡った人々」。港町として発展してきた石巻地方ならではの歴史や先人たちに光を当てた。新型コロナウイルス禍の今だからこそ、かつて海を渡った石巻人らの生きざまの中に、進むべき道を探った。

 取り上げられているのは(1)江戸時代後期に日本人で初めて世界一周した石巻若宮丸漂流民(2)アラスカのモーゼと讃(たた)えられたフランク安田(3)彫刻家として新境地を開こうと捕鯨船に乗った高橋英吉(4)大正初期にハリウッドに行き帰国後は日本映画界で監督として活躍した阿部豊(5)北洋漁業開発に夢をかけた平塚常次郎(6)ハワイで日本移民の礎を築いた牧野富三郎-と、それぞれが海を渡った者の物語として魅力を放っている。

 特筆は2004年に鳴瀬町(現東松島市)で行われた作家吉村昭氏の講演「日本の漂流記について」の内容を、ほぼ完全な形で紙上再現したこと。若宮丸漂流民の歴史的価値、役割を改めて考えさせられる。

 過去に目を向ける一方、今の活動も紹介する。慶長遣欧使節を芝居にして伝える女性演出家、石巻の特産物ホヤをモチーフにしたパフォーマンスでパリに渡った女性アーティストによる奮闘記が興味深い。

 執筆陣は郷土史の顕彰に努める人、河北新報記者、元石巻魚市場社長など多彩な顔触れ。石巻地方に根差して活動している人や、ゆかりの人が健筆を奮っているのが特徴で、「石巻学」の個性になっている。

 大島さんはコロナ禍の中、あえて海を渡った人々の特集を組んだことについて「これから生きていくために、国境を越えて前に進むエネルギーが必要とされるのではと思った」と編集後記につづっている。

 石巻学プロジェクトは石巻地方の魅力を広く伝えると同時に、石巻の歴史や文化を掘り起こすのが目的。第6号は定価1500円。A5判。165ページ。こぶし書房(東京)発売。

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