「北海道の海産物を支援して」 届いたのは粗末な品 詐欺まがい商法の被害相次ぐ

業者から届いた「2万円相当」の商品と、金色で書かれ判読困難なクーリングオフの文言

 「新型コロナウイルスの影響で、北海道名産の海産物が売れなくて困っている」。そんな電話を受けて支援目的で北海道の業者から購入したところ、価格に見合わない粗末な商品が届く詐欺まがい商法の被害が相次いでいる。同一業者による被害が全国で10件以上確認されていて、関係者は「相談のないケースも含めれば相当数に上る可能性がある」と指摘する。

中を開けてびっくり

 仙台市宮城野区の無職男性(69)に見知らぬ女性から電話がかかってきたのは8月下旬。女性は北海道に実在する業者と同じ屋号を名乗り、コロナ禍で販路を失い苦境にあえいでいることを告げた。「以前、藤崎や仙台三越の物産展に出品した際に購入していただいた。2万円相当の海産物詰め合わせを1万円で買ってくれないか」と続けた。

 男性は名産品が半額という魅力と生産地を支援したい気持ちで応じた。数日後、代引きで冷凍の小包が届いた。

 中を開けて驚いた。ベニザケ(1000~2000円相当)、アジの干物(100~200円相当)、松前漬け(440円相当)、イカの塩辛(486円相当)、サンマのみそ煮(220円相当)。河北新報社が各商品のメーカーなどに市販価格を確認したところ、合計2000~3000円の代物だった。

 男性は物産展などでの購入歴はなく、流出した個人情報が悪用された可能性が高い。直後に返品の連絡を試みたが到着した土曜日は電話が通じず、月曜日に電話に出た人物は「担当者がいない。担当者から折り返す」と答えるだけ。その後連絡がないままクーリングオフ期間が過ぎた。

購入者「だまされた」

 男性は「だまされた。少額なので警察や弁護士に相談しても無駄に疲れるだけだ。泣き寝入りするしかない」と憤る。

 同じ屋号を使われた業者も困り果てている。担当者は「自社に実害が出ていないので対応のしようがないが、長期的に見れば信用問題になる」と語る。

 小包に同封されたクーリングオフを知らせる書面は読みにくい金色で書かれていて、消費者庁によると、特定商取引法(書面の交付義務)違反に該当する。「立件するかどうかは警察次第」(消費者庁)という。

 商品を送り付けた業者は河北新報社の電話取材に「消費者は納得して買っている。文句があるならクーリングオフすればいい」と話す。
(この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報を基に取材しました)

===業者と記者の一問一答===

 「2万円相当の北海道の海産物」をうたい、10分の1程度の価格価値の海産物を送り付ける業者は、自らの行為を棚に上げて購入者に「悪徳商法にご注意ください」と書いた文書や、特定商取引法(書面の交付義務)違反の可能性がある識別不能なクーリングオフの文書を交付していた。「何の問題もない」と強弁する業者に電話取材を試みた。

 業者と記者の一問一答は以下の通り。(○などの記号は業者名や人名)

「価値観の差ある」

【記者】河北新報です。○○○○(電話相手の業者名)をかたった詐欺のような商売について取材、問い合わせをしている。いつ頃からクレームが来ているのか。
【業者】クレームですか。購入者によって価値観の差がある。ゼロはあり得ない。多少はある。「おいしかった」という声も聞く。
【記者】住所はどこか。
【業者】札幌市北区―。
【記者】そこは別の会社の住所になっている。
【業者】建物の中にいろいろな業者が入っている。
【記者】クレームはどれくらい来ている。
【業者】1割も来ていない。
【記者】商品は「2万円相当」と言っているが、本当か。
【業者】どういう意図で、こういうことをしているのか。
【記者】私に相談した人によると、○○○○(電話相手の業者名)に注文したことがないのに(勧誘の)電話がかかってきている。住所も知っている。どのように情報を入手したのか。
【業者】いろいろな店舗を回っていた。その時に購入した方か、過去の購入履歴か。
【記者】店舗とは。
【業者】物産展とか。インターネットの購入とか。
【記者】○○○○(電話相手の業者名)として入手した情報ではないのか。
【業者】○○○○(同)として。
【記者】相談者は物産展に行ったことがない。
【業者】何か買ったのではないか。僕は最近入ったばかりで分からない。ぶっちゃけ。経営者でもない。ただの電話番。
【記者】電話番だとしても、ここで商売をしている。
【業者】僕自身、仕事はしている。
【記者】いつごろから商売をしているのか。
【業者】分からない。途中で入っただけなので。
【記者】あなたは、いつから。
【業者】答える義務ない。

「答えたくない」

【記者】商品について、クレームが出ていて、説明しないのは不誠実な気がしないか。
【業者】文句があるときは、クーリングオフ対応しているので問題ない。
【記者】クーリングオフの文書を見た。文字は書いてあるけど、高齢者では読めないくらいの明るさの字だ。金色。それ以外の文字は黒で書いてあるのに、どうしてここは金色なのか。
【業者】知らない。文書を作っていない。
【記者】見えにくいと思わないのか。
【業者】僕は見える。
【記者】ところで名前は。
【業者】名乗るつもりはない。
【記者】問い合わせが来た時に名前も名乗れないのか。
【業者】あなたに言いたくない。
【記者】◇◇(業者の責任者と思われる男)さんは、どういう立場の人なのか。
【業者】話しがしたいなら、こっちに来て話して。
【記者】行ってまで話すことではない。
【業者】話すことはない。
【記者】大事な話をしているのだけど。
【業者】何で、ため口なのか。
【記者】ため口とか言われてもしょうがない。
【業者】はあ。
【記者】「はあ」て、それをため口と言う。
【業者】何で俺はあなたに敬語を使わなければいけないのか。
【記者】同じことを俺に言わせないでください。
【業者】話すことない。
【記者】クレームに誠実に対応できないのか。
【業者】あなたからのクレームではない。購入者からのクレームなら対応する。
【記者】どういう対応を。
【業者】クーリングオフで構わないので、着払いで送ってください。
【記者】私に相談をくれた人が電話した時は「担当者がいないので対応できない」と言われ、連絡が取れないままクーリングオフの期日が過ぎた。
【業者】新型コロナウイルスの感染者が出た。
【記者】コロナが理由でクレーム対応ができないというなら、いつ、どの地域で感染者が出たのか説明できないのか。
【業者】ここ1カ月くらいでコロナで体調が悪い人が出た。
【記者】退院しているのか。
【業者】念のため休ませている。
【記者】あなたは、経営者なのか。
【業者】会社として。
【記者】今も休んでいるのか。
【業者】部署が違うので分からない。
【記者】部署はどれぐらいあるのか。何部と何部があるのか。
【業者】配送と…(声が小さく聞き取れない)とか。
【記者】社員は何人いるのか。
【業者】言う必要ない。
【記者】答えられないだけではないのか。
【業者】答えられる。答えたくない。
【記者】あなたたちの商売に疑いの目が向けられていて、それに対する説明ができないのであれば疑いが強くなるだけだ。

「めんどくせぇな」

【業者】もう、いい。めんどくせぇな。
【記者】そのまま書きますよ。取材に「めんどくせぇな」って答えたと。
【業者】電話する気をなくす。内情を知らない。
【記者】知っている人は。
【業者】いない。
【記者】いつまでいない。
【業者】今はいない。
【記者】看板出して商売しているのに責任者がいないのか。
【業者】留守している。
【記者】店に問い合わせの電話をしているのに「いない」とか「どこの部署か分からない」とかでは言い訳にしか聞こえない。
【業者】(沈黙)
【記者】給料をもらっていて、この態度で電話に出て社長から怒られないのか。
【業者】あなた以外にはちゃんと対応する。
【記者】(購入者から)電話が来ても電話に出なかったり、担当が違うとか言ったりして、折り返しの返事をしていない。
【業者】それは僕たちが…(聞こえない)認めますけど。
【記者】購入者の人はクーリングオフの期間を過ぎて諦めた。ベニザケの値段はいくらなのか。
【業者】セットで売っている。一個一個の値段は分からない。
【記者】複数の業者によると、1000~2000円程度だと言っている。
【業者】僕は商品を発送しているだけ。
【記者】どういう経緯で採用になったのか。
【業者】それも言わなければならないのか。
【記者】疑いの目で聞いているので。
【業者】知り合い。
【記者】知り合いに頼まれたのか。
【業者】知り合いが会社を立ち上げた。それに入った。
【記者】一緒に経営しているのと同じことではないのか。
【業者】僕は商品を詰めるだけ。

「うそついてない」

【記者】いつから商売を始めたのか。その経緯を知っているのではないか。
【業者】詳しいことは知らない。
【記者】一緒にやっているのではないのか。
【業者】最初から一緒にいるわけではない。
【記者】あなたは、いつからやっているのか。
【業者】先月くらいから。
【記者】被害を訴えている人も先月購入した。クレームの電話を受けたことはないのか。
【業者】(商品を)返したいという電話があれば、(購入者側も)返していた。
【記者】今まで何件ぐらい返したのか。この1カ月でクレームは何件あったのか。
【業者】詳しくは把握していない。
【記者】新型コロナで大変だから助けてほしいといって営業していないか。
【業者】うそはついていない。商品は送っている。詐欺でも何でもない。クーリングオフの書類も入れている。何も問題はない。書類を入れなかったり、押し売りだったり、商品を入れなかったとかで疑いの目を向けられるなら分かる。購入者が納得して購入している。
【記者】それならクーリングオフの文字が見えにくいのはなぜなのか。
【業者】(見にくいかは)人によって違う。
【記者】複数の人に見せた。高齢者だけでなく、若い人も「読めない」と言っている。
【業者】ならば、変える。
【記者】あなたの名前は。
【業者】僕は…佐藤です。
【記者】佐藤、何さん。
【業者】□□(名)です。
【記者】記事にする予定だ。
【業者】その件に関しては上に相談する。
【記者】相談して、電話いただけるのか。
【業者】分からない。
【記者】それは相談とは言わない。
【業者】報告。
【記者】報告するだけか。
【業者】はーい。どうするかは上の者が決めるので。
【記者】いつまでも待っていられない。すぐにでも電話いただかないと。
【業者】はーい。
【記者】それでは、失礼します。

折り返しの電話

 責任者を名乗る男から約10分後に電話がかかってきた。

   ※   ※
【業者】◇◇(責任者と思われる男)です。初めまして。会社に電話いただいて、従業員が対応したとのことだが、どういった内容だったのか。
【記者】何という従業員の方ですか。
【業者】山岡。
【記者】僕には佐藤と名乗ったのだけど。
【業者】佐藤…(沈黙)。
【記者】佐藤□□(名)と名乗っていた。そうすると別人なのか。
【業者】佐藤□□(名)はいるけど、今日は山岡だったと思った。
【記者】そうですか。
【業者】問い合わせ内容は。
【記者】御社の商品について、問い合わせして佐藤という男に取材した。折り返しの要件は。
【業者】どのような取材だったのか。
【記者】佐藤に伝えた。
【業者】もう一度聞きたくて、電話した。
【記者】佐藤に取材して終わっている。何か報告があって、電話していただいたのではないのか。
【業者】詳しく聞きたいと思って電話した。
【記者】御社の従業員は何の報告もしないのか。報告を聞いて、それで何かあるなら分かるが。
【業者】詳しく聞いてから電話差し上げる。

   ※   ※
 その後、責任者を名乗る男から一切、連絡がない。

北海道の業者と記者のやりとり
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