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特集>秋の交通安全運動スタート 歩行者の安全確保など重点4項目

パレードの練習に取り組む向陽小鼓笛隊
高橋瞳さんが制作したオリジナルの交通安全グッズ
発生件数最多は午後4~6時
事故の4割が横断歩道上

 秋の交通安全県民総ぐるみ運動が21日、全国で一斉にスタートする。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年と同様に規模を縮小して実施する。石巻地方では、30日までの10日間、2市1町と石巻、河北両署、各交通関係団体が一丸となって取り組む。グッズの配布など例年通りの活動が制限される一方、交通ルールの順守や正しい交通マナーなどの啓発に一層力を入れる。

 運動は「反射材用品等の着用促進と夕暮れ時の早めのライト点灯」「横断歩道における歩行者優先の徹底と交通ルールの順守」をスローガンに掲げる。

 重点は(1)子どもと高齢者をはじめとする歩行者の安全の確保(2)夕暮れ時と夜間の事故防止と歩行者等の保護など安全運転意識の向上(3)自転車の安全確保と交通ルール順守の徹底(4)飲酒運転等の悪質・危険な運転の根絶-の4項目。

 30日を「交通死亡事故ゼロを目指す日」に指定した。

<啓発活動、各地で>

 石巻署管内では、東松島市の出動式が21日午前7時に市役所で開かれる。出動後は、JR矢本駅と陸前小野駅で「駅前交通マナーアップ作戦」を展開する。女川町の出動式は同日午前8時、町役場で実施。終了後に女川駅前交番付近で駅前街頭キャンペーンを行う。

 石巻市は新型コロナウイルス感染拡大防止のため出動式を中止した。河北署は21日午前9時半、署の駐車場で出動式を行う。開式前には交通安全祈願祭を開く。新しいスローガンを記した看板を署前に掲示した後、午前10時ごろから出動式を実施。石巻市小船越にある道の駅「上品の郷」で午前10時半、交通安全キャンペーンを行う。

 石巻市向陽小周辺道路では、21日午前10時20分に「社会を明るくするパレード」がある。6年生による鼓笛隊が学校周辺を行進し、プラカードなどを掲げて啓発する。市前谷地小では22日、交通安全教室が開かれる。

 東松島市は24日午後4時半、東松島高付近で「横断歩道止まるっちゃ!ハンドサイン作戦」を実施。午後5時半には同市市矢本新沼のフレスコキクチ矢本店前で「飲酒運転根絶!!明日の笑顔を守る作戦」に取り組む。

 三陸沿岸道矢本インターチェンジ(IC)付近の県道では25日、「シルバーナイト作戦」を行う。28日には航空自衛隊松島基地で隊員を対象とした二輪車講習が開かれる。

 石巻地区交通安全協会は29日午後3時、石巻署などと連携し、石巻市元倉交差点で「いしのまき絆作戦」を展開する。

 石巻署は運動最終日の30日午後3時、同市恵み野3丁目のDCMホーマック石巻蛇田店で「石巻ワンチーム作戦」を実施する。パトカーや白バイの展示があり、写真撮影などを楽しめる。交通安全教育車「みやぎくん2号」も出動し、運転操作検査などの体験もできる。

■ 石巻・向陽小、最後のパレード 地域に感謝

 石巻市向陽小(児童376人)は21日、学校周辺で「社会を明るくするパレード」を実施する。秋の交通安全運動の一環として行うのは本年度が最後となる。6年生68人で編成する鼓笛隊が演奏を通して地域に感謝を伝え、事故のないまちづくりを呼び掛ける。

 同小の鼓笛隊は2011年から、秋の交通安全運動の一環としてパレードを行ってきた。東日本大震災の影響で運動会などが中止になり、演奏を披露する場が少なくなったことがスタートのきっかけだった。

 震災の発生から10年の節目を迎え、本年度を最後とすることが決まった。片岡有吾校長は「子供たちは毎朝、保護者の方々などに見守られて登校している。多くの人々の支えがあって行事を続けることができた」と感謝する。

 新型コロナウイルス禍でも、パート別に練習するなど感染対策を徹底しながら準備をしてきた。17日には最後の練習が校庭であり、「風になりたい」を繰り返し演奏して本番に備えた。

 指揮者の藤井梨杏(りあん)さん(12)は「みんなで練習ができてうれしい。先輩や先生、地域の人たちへの感謝を伝えたい」と話した。

■ 光る缶バッジ寄贈「子どもたち守りたい」 

 石巻地区交通安全協会が窓口で配布している交通安全グッズの中に、アルパカを模したオリジナルキャラクターの缶バッジがある。協会員の親戚が「一件でも事故が減るように」と思いを込めて制作した。

 アルパカのキャラクターの名前は「アルパッカ」。やわらかそうなシルエットを警察官の制服に包み、「交通安全」の4文字を掲げる。表面は太陽光や蛍光灯などの光を蓄える蓄光塗料でコーティングされている。暗い場所で光るため、夜間の外出時に着けるのがお勧めだ。

 同協会石巻支部開北分会の女性部長高橋チエ子さん(79)が、100個を協会に寄贈した。デザイン、制作に当たったのは、チエ子さんの孫の会社員高橋亜斗(つぐと)さん(27)の妻で画家の瞳さん(28)=千葉県柏市=。「ねこはしひとみ」というペンネームの画家として活動し、イラストやグッズ制作に取り組んでいる。

 瞳さんが缶バッジを作り始めたことから、チエ子さんが交通安全グッズとしての制作を依頼した。将来の子どもに読み聞かせたい絵本のキャラクターとして考案した「アルパッカ」をあしらった。瞳さんは「子ども向けのデザインなので、小さい子に着けてもらえればうれしい」と話す。

 グッズは石巻署内の協会窓口で希望者に配布している。工藤昭二事務局長は「新型コロナウイルス禍が収束すれば、キャンペーンでも配布するなど積極的に活用したい」と語った。

石巻署交通課長・高橋邦弥さんに聞く

 秋の交通安全運動のスタートに当たり、石巻署の高橋邦弥交通課長に管内の交通事故の状況や特徴、対策などを聞いた。

-1月から8月末までの管内の交通事故状況は。

 「事故の件数は減少傾向にある。人身事故は157件で前年同期に比べ52件減った。負傷者は重傷は27人と増減なしで、軽傷者は63人減って172人だった。一方、物損事故は増えており、105件増の2308件発生した」

-秋口から注意するべき事故の特徴は。

 「日の入りが早くなるため、歩行者を視認しにくくなる。特に薄暮時は歩行者の絡む事故が増えやすい。運転手は早めにライトを点灯する心掛けが必要だ」「大前提として、運転手には安全な速度で運転する義務が課せられている。速度制限の有無にかかわらず、道路環境にあった速度で走ってほしい」

-歩行者はどのような対策をする必要があるか。

 「夜間に出歩く際は、反射材などを活用して車に存在をアピールするべきだ。普段から車を運転する人は、どんな服装なら早く運転手に見つけてもらえるかを意識してほしい」

-運動の重点には飲酒運転の根絶もある。

 「年々減少する傾向にあり、8月末までに検挙したのは15件で、昨年同期から4件減った。しかしコロナ禍が収束して外での飲酒機会が増えれば、飲酒運転が増加することは間違いない」

 「逮捕があれば、飲食店は貴重なお客さんが減ることになる。常連さんを減らさないためにも、飲食店も飲酒運転根絶の呼び掛けに協力してほしい」

<薄暮時、車も人も要注意>

 石巻署管内で過去5年間の9~12月に起きた事故件数を時間別に見ると、午後4~6時の薄暮時間帯に事故が起きやすいことが分かる。午後5時が101件と最も多く、6時は63件、4時62件と続く。

 事故件数が2番目に多い時間は午前7時の65件。朝の通勤、通学時間帯の事故とみられる。

 署によると、過去5年間の午後4~6時に起きた事故の累計は596件。そのうち9~12月の件数が約4割を占め、他の期間に比べて事故の発生率が高いことが分かる。

 高橋邦弥交通課長は「ヘッドライトのオート機能を使っている人も多いが、薄暮時には自動でつかない場合もある。早めのライト点灯を意識的に行ってほしい」と呼び掛ける。

 石巻署管内で過去5年間に発生した事故を累計別に比べると、人と車が絡んだ事故の4割が横断歩道上で起きている。

 日本自動車連盟(JAF)が2020年に実施した全国調査では、横断者がいる時に一時停止した車の割合は、宮城県が5・7%と全国で最下位だった。

 調査結果を受け、県警は毎月10日を「十○(とまる)日」と定めるなど、歩行者がいる信号機のない横断歩道で、自動車側が一時停止する交通ルールを浸透させる運動に取り組んでいる。

 高橋交通課長は「横断歩道の前にはダイヤマークがある。歩行者保護のためにマークを視認できる速度での運転を心掛けてほしい」と述べた。

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