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古書店主ら真剣勝負「市会」に潜入 【特集】小さな書店放浪記・番外編

宮城県大和町で行われた市会。中央が高橋理事長

 古書業界の人たちにとって重要な集まりがある。「市会(いちかい)」と呼ばれる入札会だ。宮城県古書籍商組合が偶数月に、岩手県の組合が奇数月に1回ずつ交互に各県で開催する。

 会場に運ばれるのは、各店が客から買い取ったものの「店の品ぞろえに合わない」などの理由で店頭に並ばなかった古書。10月8日(金)、会場の宮城県大和町のベルサンピアみやぎ泉の一室には、古書の束が続々と台車で運び込まれた。

 「前回(8月)はコロナの影響で中止だったから冊数が多い。1万冊近くあるかも」と宮城県古書籍商組合の高橋三雄理事長。会場には和とじの本や漫画、有名作家の全集、古地図などが積み重ねられる。

 この日は宮城、岩手、山形、福島、茨城県の古書店主ら20人が参加。店を構える都道府県の古書籍商組合の組合員になっていれば、全国のどこの市会でも参加できる。

 「振り手」という競りは、魚市場などと同じように、競りの参加者が値を上げていく方式だ。

 テーブルの上に乗せられた本の束が1000円ほどからスタート。例えば段ボール箱に詰められた岩波文庫。競り人が「1000円」と声を上げると、参加者は「2000円」「3000円」と値を上げていき、最高値を付けた人が落札者となる。

 誰も値を付けなければ、競り人が「成らず」と宣言して不成立。これが何度も繰り返される。

 落札希望額を書いた札を封筒に入れる入札方式も。本の束に貼られるのは、タイトルや出版年などを記入した封筒。落札希望者は値段を書いた札を入れる。封筒に「止メ2万円」とあれば、2万円以下では売らないという意味だ。出品数が多いと「振り手」だけでは時間が足りないので、入札との併用になる。

 「市会に参加すれば、どんな本にどのぐらいの値が付くか分かる。ライバル店との競合で競りに勝ったり負けたりする。勉強の場でもあります」と高橋理事長。古書店経営を始めた人は、市会でもまれて一人前になるのだという。

(河北ウイークリーせんだい編集部)

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