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衆院選・宮城5区 震災とコロナ、災禍の中で(中) 福祉の担い手不足

園庭で穴を掘って遊ぶ園児たち。保育現場の人手不足は喫緊の課題だ=石巻たから保育園

<処遇の改善 対策不十分>

 医療や介護、保育の現場で働くエッセンシャルワーカー。新型コロナウイルス下の社会を支え、世間から称賛を浴びる一方、待遇改善は進まず、保育士や介護士のなり手は不足する。

 「国は現場を分かっていない」。石巻市内で二つの保育園を運営する社会福祉法人「輝宝福祉会」の小野崎秀通理事長(73)が嘆く。

 保育士不足が現場と経営を圧迫する。2013年に開園した渡波地区の「石巻ひがし保育園」は一時、約90人の園児を受け入れていたが、保育士が足りなくなり、今は55人。16年に蛇田地区に開いた「石巻たから保育園」も定員を当初計画より15人減らした。

 小野崎理事長は同市渡波の洞源院の住職。東日本大震災で高台にある寺は避難所になり、約400人が身を寄せた。子どもたちの存在は避難生活の希望だった。「子どもがいないと地域は寂れる」。市から渡波地区の保育所の本格再建が6年後になると聞き、自ら開設することを決意した。

 開園を機に県外や市外から子育て世帯が戻った一方、市内で保育所の再建や新設が進んだ。待機児童数が減る半面、保育士の「奪い合い」が激しくなった。

 必要な人員を確保するため、本年度から職員の給与を月額1万5000円引き上げた。国から支給される運営費は決まっており「施設の修繕が必要にならないかビクビクしている」

 園では自然を生かした遊びを重視し、子どもの感性を育む。ベテラン保育士は「幼児期の発達を保証する専門職で、ただの子守ではない」と憤る。

 国は17年、一定の経験年数で月額4万円などを上乗せする制度を導入したが、施設内の対象人数に上限を設けた。小野崎理事長は「現場に不公平感を生む制度は撤廃し、全体を底上げするべきだ」と訴える。

 人手不足は介護分野でも深刻だ。障害者、高齢者、保育の福祉事業を展開する市内の社会福祉法人「夢みの里」は地元高校生らの体験や見学を積極的に受け入れ、人材確保にもつなげている。菅原桂子理事長は「若い人が仕事に魅力を感じてくれても、今の処遇では家族を養うのも大変だ」と語る。

 全国的に進む人口減少が被災地で加速する。菅原理事長は「人材獲得の競争が激しくなる。このままでは社会を支える仕事に人が集まらなくなる」と危ぶむ。

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