衆院選・宮城5区 安住氏、強さ発揮し9選 森下氏、善戦も届かず
第49回衆院選は10月31日投票が行われ、即日開票の結果、宮城5区は、立憲民主党前議員で党国対委員長の安住淳氏(59)が、自民党新人の森下千里氏(40)=公明推薦=に1万9000票余りの差をつけ、9選を果たした。森下氏は、重複立候補した比例東北でも復活当選できなかった。
投票率は57.34%で、前回(2017年10月)を3.33ポイント上回った。当日の有権者は25万2373人。
安住氏は12年12月の衆院選以降、4回の総選挙で全市町で得票トップ。大票田で出身地の石巻市では3万6584票を獲得し、「地元の代表」として強さを発揮した。ただ、同市での得票は4万を超えた前回より3500票余り減らした。
コロナ禍で制約を受ける選挙戦となったが、党幹部を務めるなど知名度の高さに加え、強固な後援会組織が全面的に支えた。野党統一候補として、共産党や連合など各団体の支援も受けた。「自民1強政治」の打破を訴え、政権批判票を取り込んだ。
4月の石巻市長選で支援を受けた斎藤正美市長が応援し、自民支持層の票が一定程度流れた。一方で、斎藤市長との接近で従来の安住票の一部が離れた。
森下氏は4月に党宮城5区支部長に就任。元タレントとはいえ、政治経験がなく5区内では認知度が低かったため、1600回を超えるつじ立ちを重ねた。
5区は「自民空白区」で、議席奪還を目指し、高市早苗党政調会長や三原じゅん子前厚生労働副大臣、牧島かれんデジタル相、小野寺五典元防衛相ら党幹部や閣僚らがてこ入れしたほか、自治体首長や県議らがフル回転した。
森下氏は「宮城5区に国政の光を当て、住民の暮らしを豊かに、幸せを形にしたい」と訴え、自民、公明支持層に加え無党派層への浸透に注力したが、安住氏に届かなかった。
惜敗率は75.78%で、比例東北ブロックで自民党が獲得した6議席に入ることはできなかったが、6万1000を超える得票で善戦した。(浜尾幸朗)
◇衆院選宮城5区開票結果(選管最終)
当81,033 安住 淳 立前(9)
61,410 森下 千里 自新
◇宮城5区の市町別候補者得票数と投票率(投票率は%)
安住淳(立前) 森下千里(自新) 計 投票率
石 巻 市 36,584 28,530 65,114 54.97
東松島市 10,415 8,479 18,894 57.50
女 川 町 1,730 1,598 3,328 63.65
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大 崎 市 10,213 7,124 17,337 58.50
(旧志田郡、旧田尻町)
松 島 町 4,220 3,168 7,388 63.33
大 郷 町 2,140 1,745 3,885 58.64
涌 谷 町 4,698 3,191 7,889 59.54
美 里 町 7,810 4,476 12,286 60.66
南三陸町 3,223 3,099 6,322 60.39
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5 区 計 81,033 61,410 142,443 57.34
○在職26年 安住さん「新たな気持ちで」
午後8時の投票終了後、すぐに安住さんの当確が報道されると、石巻グランドホテルに集まった約80人の支持者から拍手が沸いた。
間もなく安住さんが入場し、選対本部長の青山久栄連合後援会長が「おかげさまで当確が出た。感謝の念でいっぱい」と述べた。斎藤正美石巻市長は「東日本大震災時の実績が認められた。復興の完遂、新型コロナの収束、経済を立て直すため、二人三脚で取り組む」と語った。
万歳三唱の後、花束を贈られた安住さんは「大変厳しい選挙だった。震災から10年がたった。まだまだやらなければならないことがたくさんあり、身につまされたこともあった。在職26年目になるが、新たな気持ちで頑張る」と力を込めた。
報道陣の質問に答え、9選後、まず取り組むことについて、「第6波」に伴う医療崩壊を防ぐため、十分な備えと自治体に財政措置をすると強調した。
●活動半年 森下さん「私の力不足」
森下さんは、比例東北での復活当選も困難と判明した1日午前3時50分ごろ、石巻市中里6丁目の事務所で支持者らにあいさつ。吹っ切れた表情で「半年という活動だったが6万票取れたことを誇りに思う」と選挙戦を振り返った。
小選挙区で敗れた際は「私の力不足」と目を潤ませた。それでも、最後は関係者と笑顔でグータッチをし、労をねぎらった。
これまで、1600回を超えるつじ立ちなどで支持を呼び掛けてきたが、対立候補の壁は高かった。今後については「まだ決めていないが、これからも皆さんと頑張っていきたい」と話した。