「減災」「防災」をキーワードに、新たな産業と市場が胎動している。
東京国際展示場(東京・有明)で10月中旬、震災対策をテーマに「危機管理産業展2012」が開かれた。今年で8回目となる見本市には、過去最多の337社が出展。このうち約4割が新規の出展だった。
会場中央で、大手企業を差し置いてひときわ大きなブースを構えていたのは、意外にも東京下町の町工場、社会福祉法人「葛飾福祉工場」だった。避難ばしごや救助用工具、帰宅困難者キット、家具転倒防止金具、カセットコンロなどありとあらゆる防災用品が並ぶ。
「ここが出展してくれなければ、震災対策の見本市にならない」(産業展事務局)と誰もが一目を置く「防災の総合商社」だ。震災直後の11年度は65億円を売り上げた。
葛飾福祉工場が産声を上げたのは1972年。消火用バケツの製造からスタートし、地道に防災用品の製造を手掛けてきた。やがて、保存食品、避難用品、衛生用品などあらゆる防災関連商品の販売を一手に引き受けるようになる。
防災市場は、災害直後の急拡大と、その後の縮小の繰り返しだった。葛飾福祉工場業務課長の清水心さん(40)は「これ以上拡大する余地はないと見られていた市場だが、大震災後はこれまでと違う」と強調する。
変化の兆しは、3日間で6万2000人を超えた来場者の顔触れにも見て取れた。バイヤー以上に自治体や企業の防災担当者で会場はごった返した。
葛飾福祉工場の向かい側ではオフィス機器のコクヨ(東京)も防災用品を陳列し、カタログを配布していた。「自治体や企業が災害対策に予算を振り分ける時代になった。葛飾福祉工場が独占してきたシェアを切り崩したい」と担当者は、対抗心を隠そうとしない。
新日鉄グループの日鉄住金建材(東京)仙台製造所に5月、高さ11.0メートルの津波避難タワーが完成した。仙台製造所が津波で被災した経験を生かして開発し、市場に送り出した新製品だ。
同社のプロジェクト営業推進班は「来るべき南海トラフ巨大地震などを考えれば、需要は伸び続ける」と読み、産業展で自治体に売り込みを図る。
津波避難タワーの商品化は、環境機器メーカーのフジワラ産業(大阪)がパイオニアとされる。震災前に20基を建設し、震災後もわずか半年で5基を受注している。
フジワラ産業のブースでタワー課の谷口準さん(24)は「実績で業者を選んでほしい」と自治体関係者を口説いていた。「未成熟な市場だけに、ノウハウを蓄えれば小さい企業でも大手に勝てる」と谷口さんは強気に攻める。
被災地からの出展もあった。生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)は、手回し充電ラジオ、使い捨てカイロ、携帯トイレ、毛布などを、衣装ケースに収納した「避難セット」を紹介した。
「震災の実体験を基に自社製品を詰め合わせたら、それで防災グッズになった」と販促イベント部の山田慶典さん(33)は語る。
大震災は、産業界にも大きなインパクトをもたらした。既存の技術や商品の転用という発想の転換で、災害大国ニッポンに新産業が形成されようとしている。
自然災害を完全に封じ込めるすべはなくても、英知を結集して被害を減らすことはできる。未曽有の災禍から私たちは「備え」の重みを学んだ。
河北新報社の提言「世界に先駆けた減災産業の集積」は、地域住民の安全安心を確保するための経済・産業活動を「減災産業」と位置付け、被災地への集積を訴える。
産官学の研究開発機関、ベンチャー企業のオフィスなどが入居する「東北減災リサーチパーク」を整備し、被災地発の技術・製品を世に送り出すことで、世界に貢献する復興を目指したい。
大震災を教訓にして急成長を遂げつつある減災産業の最前線を追った。
(東北再生取材班)
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