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異業種連携が地域をアツくする 特集/みやぎをアツくするラーメン

食堂きかくの「サバだしラーメン」(800円)。あっさりとしていながらも風味豊かでこくのあるスープに、喉越しのいい細麺がよく合う。揚げたサバのつみれはふわふわで、タマネギの甘味と食感がアクセント。焦がしネギとニンニクチップの香りが食欲をかき立てる(Photo by 堀田 祐介)
石原慎士さん
食堂きかくの厨房で試行錯誤する石原ゼミの学生たち
石巻専修大の大学祭でテスト販売したところ、瞬く間に売り切れた

 ある日、ラーメンをこよなく愛する編集部員がつぶやいた。「どうして仙台にはご当地ラーメンがないんだろうね」。確かにうまい店はたくさんあるが、共通の特徴があって全国的に知られたラーメンが仙台にはないかもしれない。いや、待てよ。宮城第2の都市、石巻にはあるじゃないか。「サバだしラーメン」がご当地グルメとして成功した秘けつを探ってみた。

異業種連携が地域をアツくする

 サバだしラーメンは石巻市飯野川地区の食文化を伝える魚介系ラーメンだ。市町村合併によって中心市街地ではなくなった地域の活性化を目指し、当時石巻専修大教授だった石原慎士さんのゼミが産学・異業種連携のプロジェクトとして開発した。

 プロジェクトは2010年にスタート。同地区で昔から料理にサバだしやさば節が使われていることに着目し、サバの中骨で取っただしを用いたサバだしラーメンを考案。仮設住宅での試食会や大学祭での販売で好評を博し、飯野川商店街でもオリジナリティーあるサバだしラーメンの販売を始めた。13年には地元企業とタッグを組み、家庭版を商品化。製麺会社「島金商店」、水産加工品会社「山徳平塚水産」、農業組合法人「舟形アグリ」、河北まちづくり研究会「なつかしの町・飯野川」が尽力した。

 現在、宮城学院女子大の教授を務める石原さんは、サバだしラーメンがご当地グルメとして成功した理由を「サバを地域の共有資産と捉え、産学・異業種が本音を言い合いながら有機的に連携したから」と振り返る。

 「食べ物には人を呼び込む力があるのです。その場所に行かないと食べられないメニューを考え多くの人に愛されるように育ててこそ、ご当地グルメや地域ブランドになります」

<宮城学院女子大現代ビジネス学科教授 石原慎士さん>
 八戸大准教授、石巻専修大教授などを経て2018年4月から現職。専門はマーケティング論。

(河北ウイークリーせんだい 2021年12月9日号掲載)

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