閉じる

セリの根っこってどう洗えばいい? 【特集】滋味あふれる セリの誘惑

根っこの洗い方

(1)
(2)
(3)

 冬のセリは茎の根元部分の甘みが増す。ここを根っこと一緒に味わうのが醍醐味だ。でも根っこの部分はちょっぴり黒っぽい汚れみたいなものが付いている。どうやって洗えばいいかを三浦さんに教えてもらった。

 「セリを収穫するときは高圧の水で根っこ部分の泥を落とす。でも、それだけでは泥を完全には落としきれない」と三浦さん。

 そこで使うのが新しい歯ブラシだ。(1)まずは根っこ付近の外側の汚れを流水に当てながら歯ブラシでこすり取る(2)次に根っこ部分を開いて洗う(3)半分に切ってさらに洗う。

 「ホウレン草など冬野菜は根っこ部分の甘みが増す。セリは根っこ部分だけを天ぷらにしてもうまいですね」

 買ってきたら全体を新聞紙でくるみ、バケツに入れて立てて根っこ部分を水に浸ける。横にしたり、光が当たりやすい場所で保存したりすると葉が黄色くなってしまう。買ったら早めに食べるのがお勧めだ。

地元学習の素材に活用 名取市下増田小

セリ田で説明を受ける下増田小児童

 セリは小学生の地元学習にも活用されている。三浦さん方のセリ田を昨年11月に訪ねたのは名取市下増田小の6年13人。「総合的な学習の時間」で同小児童は毎年、三浦さんにセリ栽培の歴史やお勧めの食べ方など教えてもらっている。

 「セリは大好き」と口をそろえる児童たちだが、セリ田を間近で見るのはほとんどが初めて。セリ田には多くの生物がすんでいるこ
とや、セリは日本原産であることなどについて教えてもらった。

 女子児童は「インターネットで調べても分からなかったことを教えてもらった」とにっこり。別の児童は「根っこがおいしいと聞いて驚いた」「スーパー以外でセリを見たのは初めて」などと目を輝かせていた。

 児童らはこの取材を基に、授業で名取の産業の将来について考えていくという。

漢方にも 野菜の注目株

宮城学院女子大生活科学部准教授 後藤 知子さん(栄養生理学)

宮城学院女子大生活科学部准教授
後藤 知子さん(栄養生理学)

 セリは、体内でビタミンAになるベータカロテン、葉酸、ビタミンCなどのビタミンに加え、鉄、マンガン、カルシウム、カリウムなどのミネラル、食物繊維、ケルセチンなども豊富に含まれている緑黄色野菜です。多くのポリフェノール類も含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、肝細胞の保護作用などが報告されています。

 薬用として使用されることもあり、漢方では二日酔いや黄疸に効果があるといわれています。

 葉酸はDNAなどの合成に必要な栄養素です。ポリフェノールの一種であるケルセチンには、抗酸化作用などの生理作用があることが報告されています。

 乾燥させて生薬にも用いられており、セリは単なる野菜ではありません。とりわけ根っこ部分も食材にする「セリ鍋」は、セリを丸ごと食べられます。煮込まないで食べるので、ビタミンCが損なわれることがないのがうれしいですね。

 セリ独特の香りの精油成分には、胃液の分泌を促すなど健胃作用があるとされています。七草がゆに使われるように、年末年始の食べ過ぎにはもってこいです。

 日本原産で古くから食べられ知られていますが、近年、セリに含まれる芳香成分、ポリフェノールなどの生理作用に関する論文も報告されています。さらに研究が進むかもしれません。

<略歴>石巻専修大理工学部講師、東北大院農学研究科助教などを経て現職。

「セリ鍋」知名度アップ 観光資源にも

 全国一の生産量を誇る宮城のセリは、生産者だけでなく県の観光関係者にとっても重要な作物。「仙台セリ鍋」の知名度がアップしており、セリ鍋目当てで仙台を訪れる観光客もいるという。

 石巻市河北地区の「河北せり」は2020年、地域の農水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度に登録された。名取市の「仙台せり」も登録申請している。

 収量増を図るため県は同年、茎と根が太く食感が柔らかい新品種「Re14-4」を品種登録出願した。茎の分岐が少なく、収穫や出荷調整の手間が省けるという。県農業・園芸総合研究所(名取市)によると、主力の「島根みどり」より歩留まりが高く、現在は県内作付面積の1割以上に当たる約4haで作付けされている。

 県園芸推進課は「日本一である宮城のセリを、ぜひ味わってほしい」と期待する。

(河北ウイークリーせんだい1月13日号掲載)

関連リンク

関連タグ

最新写真特集