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仲介手数料、取られ過ぎ? 借り主の支払い上限は原則0・5カ月分

 進学や就職、転勤で新居を決める人も多い季節。長野県内の40代団体職員男性が「仲介業者に支払う『仲介手数料』を取られ過ぎないよう気を付けた方がいい」と、信濃毎日新聞(長野市)の「声のチカラ」(コエチカ)取材班に情報を寄せた。仲介手数料は国の告示で上限額が定められているが、男性は上限額を超える手数料を支払った後、仲介業者に問い合わせて過払い分を取り戻したことがあるという。

 話は5年ほど前にさかのぼる。男性は県内から県内への転勤に伴い、アパートを借り直した。その際、仲介業者に言われるがまま、新たに借りるアパートの家賃1カ月分の約7万円を手数料として支払った。「当時はそういうルールだと思い込んでいた」と振り返る。

 男性はその後、東京都内の男性が手数料の過払い分の返還を求めて提訴し、東京地裁が2019年8月、返還を命じたことを知った。借り主が支払う手数料の上限は原則0・5カ月分。借り主が承諾しなければ、上限を超える分は無効-との判決内容だった。

 「これ、自分も同じじゃないか?」。男性は同年11月、仲介業者に問い合わせた。すると、20年1月に東京地裁の判決が確定したこともあり、業者が返還に応じた。

 国土交通省の告示によると、仲介手数料は原則として「借り主と貸主から家賃0・5カ月分ずつで、合わせて1カ月が上限」だ。ただし、借り主の承諾を得ている場合はその内訳を変更し、借り主に1カ月分を支払わせることを例外的に認めている。確定判決の影響もあり、ホームページなどで仲介手数料は「家賃の半月分」と明示する業者もあるが、いまだに1カ月分の手数料を掲げている業者もある。

 長野市のJR長野駅前に店舗を構える業者もその一つ。同駅から徒歩10分で3LDKの家賃6万9000円のアパートの仲介手数料は税込みで7万5900円だ。担当者は取材に対し「契約の際、借り主の承諾を得ており、問題ない」と説明した。

 だが、東京地裁の訴訟で原告代理人を務めた椛嶋裕之弁護士(東京)は「国の告示は、借り主を保護するための規定だ」と反論。「業者はまず最初に、仲介手数料は『0・5カ月分』が原則であることを説明すべきだ」とする。

 借り主が国の告示に基づいて交渉することで業者が値下げに応じる事例もあるという。椛嶋弁護士は「借り主も仲介手数料に関する知識を身に付けて業者との契約に臨む姿勢が大切だ」と話している。
(信濃毎日新聞提供)

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