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石巻市議選 新人多数の激戦なぜ? 震災11年、新局面後押し

 22日投開票の石巻市議選は、2005年の1市6町合併後では最多の新人16人が名乗りを上げ、定数30に対し立候補者43人がひしめく激戦となった。全国的に地方議員のなり手不足が進み「定数割れ」の事態も出始める中、なぜ多数が出馬したのか。背景を探った。(石巻市議選取材班)

JR石巻駅前で演説し、市民にPRする新人候補

<議会への厳しい目も反映か>

 新人には東日本大震災の復興支援に携わってきた候補者が多い。「震災10年の節目は大きかった。復興後の石巻を希望あるものに変えたいと思い、挑戦を決めた」。震災後に市内に移住した新人男性は出馬の動機をそう語った。

 青少年育成などに関わってきた別の新人男性は「政治レベルでないと動かせない問題に何度もぶつかり、その立場で活動したいと思った」と説明した。

 震災から10年が過ぎ、まちづくりは新たな局面に入った。人口減少で閉塞(へいそく)感が漂う地域には現状打破への期待感も広がる。「それぞれの活動の中で市政や市議会を変えたいと感じた人が多かったのだろう」と新人女性は語った。

 議員のなり手不足が深刻化する中での多数出馬には、現職側にも好意的な反応が多い。中堅の現職は「自分の選挙は厳しさを増すが、地域にとっては良いこと」と受け止める。

 市議会に厳しい視線が向けられた結果との声もある。ある現職男性は告示された15日の第一声で「新人が増えたのは市議会がふがいないからだ。市民の声を届けていない」と断じた。

 昨年4月の市長選を要因に挙げる向きも。12年ぶりの新市長を決める争いは関心を集め、市議選の新人候補の複数が選挙運動に加わった。政治との距離を縮める結果になった一方、関係者には「市議なら自分にもできる、と簡単に考えてしまったのでは」との冷ややかな見方が出ている。

 選挙結果では世代交代の行方が焦点の一つになる。新人の多数出馬は追い風ムードをつくる半面、新人への票が割れ、現職有利に働く可能性もある。新人男性は「ある程度の人数が当選しないと何も変わらない」と歓迎するが、新人女性は「投票率が上がればいいが、票割れの危機感はある」と明かす。

 市議選は地元での知名度や地縁、血縁が大きなウエートを占める。6期目を目指すベテランの現職は「地域活動を何十年も続けてきた。震災後に石巻に来た人たちとは違う。若さだけで世代交代と言う前に、地域への貢献度を見てほしい」と語った。

買い物客に投票呼びかけ

 石巻市明るい選挙推進協議会と市選管は17日、市議選の啓発キャンペーンを恵み野3丁目のヨークベニマル石巻蛇田店とDCMホーマック石巻蛇田店で実施した。

 13人が参加。3カ所に分かれ、買い物客らに「22日に選挙があります」と呼びかけながら投票日などが記されたポケットティッシュ500個を配布した。

 推進協の木村一男会長(78)は「地元の声を反映できる大切な選挙。投票率6割を目指したい。啓発活動をきっかけに家庭でも選挙について話し合い、若者の投票につなげてもらえればうれしい」と話した。

 期日前投票所は石巻市役所や各総合支所などに設置されている。

投票を呼びかける推進協のメンバー=石巻市恵み野3丁目

私の一票

■若者支援充実を 佐藤由佳さん(29)=児童館職員、石巻市東中里3丁目 
 高齢者のような支援を受けない18歳から30代までの若い世代にも就業などの支援が必要だと思う。1人暮らしの若者が地域と関わる場や転入者が子育ての悩みを共有できる環境も充実させてほしい。 
 結婚や出産などライフステージが変わっても安心して暮らせるように、住み続ける決め手になるような支援策を打ち出してほしい。

■日頃の活動注視 小泉栄紀さん(55)=会社役員、石巻市桃生町寺崎 
 市民にとって最も身近な選挙だけに関心はある。投票する上で判断材料にしているのは候補者の公約はもちろん、日頃の諸活動。例えば、現職なら議会で、どのような発言をしたかなどをチェックして一票を投じたい。新型コロナウイルス感染症で地元経済に影響が出始めている。雇用の確保など経済対策に力を注ぐ候補者に期待したい。

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