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生活スタイルの変化で再出発 【特集】間借りのグルメ

酒瓶が並ぶ居酒屋のカウンターでコーヒーをドリップする「仙台駅前喫茶こまどり」店主の及川丈太郎さん。コーヒー豆は及川さんがセレクトした仙台市内のコーヒー店2店のものを使っている

 既存店舗の空き時間を活用した「間借り」をはじめ、多様な営業スタイルの飲食店が増えている。理由はコロナ禍だけでなく、出産による暮らしの変化や子育ての経験、働き方の多様化などさまざま。無理のないスタイルで新たな挑戦を楽しむ店主に話を聞いた。

居酒屋が終わればカフェ開店 仙台駅前喫茶こまどり

2店分を並べて出し やすくしたのれん

 コロナ禍の苦境にある居酒屋の営業時間外に間借りして賃料を折半し、互いに助け合う営業スタイルで3月にオープン。コーヒー1杯220円からという通いやすい料金設定と、駅前という便利な立地もあって幅広い世代に支持されている。特製のずんだバターとトーストのセット「仙台モーニング」(330円、ドリンク別途)をはじめ、仙台・宮城の名物と和の食材をふんだんに盛り込んだメニューは観光客にも好評だ。

 店主は、かつて勤務先のカフェで豆の焙煎を任されたのをきっかけにコーヒーの奥深い魅力にはまったという及川丈太郎さん。「設備が整った厨房があるからこそ新しい挑戦もしやすい。間借り営業のメリットは機材の部分でも大きいです」と話す。

「和ティラミス」(330円)

仙台市青葉区花京院1-1-52 
朝日プラザ花京院地下1階Mt.Ash内
℡070-1143-9961
営/月~水・金・土曜5:00~15:00
  日曜11:00~17:00
休/木曜、第2日曜

勤め先でパンの販売会に挑戦 こなこ

前 日に生地を仕込 み、午前3時に焼き 始めるという太田さ ん。火曜以外は泉区 の本店で調理を担当 し、配達もしている

 「こなこ」の屋号でパンや焼き菓子を作っている太田萌さんが、健康志向を掲げる弁当店「菜々草一番町店」の一角で5月から火曜に販売会を行っている。

 太田さんは2018年から菜々草でパート勤めをし、昨年4月に出産。産休中はパンや焼き菓子を作ってイベント出店し、出産時期が重なった姉とInstagramで料理教室の配信もした。職場復帰の際、菜々草の社長から販売会の提案があり挑戦した。

 パン好きで「つい食べ過ぎてしまう」という太田さんは「食べても罪悪感がない」をコンセプトに、豆腐を使ったヘルシーなパンを作る。卵やバターは不使用。砂糖はきび砂糖に限定し、野菜など食材の味を生かしている。

 看板商品の「おとうふパン」(240円)は生地の半分に豆腐を使い、優しい甘さとふんわりもちもちの食感が魅力。「ほうれん草ツナ」(270円)、「ごまマリトッツォ」(300円)など約10種がある。「子どもが大きくなったら、パンやお菓子をゆったり味わえるカフェを開けたら」と夢を膨らませる。

手前がこなこの販売スペース。多彩なパンは全て「おとうふパン」がベー ス。ヘルシーさに加え「子どもも安心して 食べられる」という点も大切にしている

仙台市青葉区一番町1-6-19 
一番館ビル1階 菜々草一番町店内
営/火曜11:00~14:00
  ※売り切れ次第終了

生活スタイルの変化で再出発 Paninoteca Come Sta

取材日に登場した、フォカッチャを (330円) 使った「生ハムとフレッシュモッツァレラ」 (650円)のサンドイッチ。切り立ての 生ハムはとろける口当たりで格別にお いしい

 生ハムとサラミの専門店「Salumeria Come Sta」、サンドイッチと総菜の店「ing」を1月にクローズし、実店舗を持たない「旅するサルメリア&パニーノテカ」として再出発。イベント出店に加え、高級酒の量り売りと量り飲みができる酒店「buzaemon」の営業時間外に、パニーノや総菜、生ハム、ドリンクを4月から販売している。

 パニーノの内容は週替わりで、パンはフォカッチャ、クロワッサン、ピアディーナ(薄焼きの無酵母パン)の3種から選べる。いずれもイートインと持ち帰りに対応。お酒もあり、特に週末はほろ酔いの客も多いという。

 buzaemonでの営業は週4日。店長の内藤詩音さんが中心となって接客している。営業日以外は、オーナーの千葉元気さんらと仕込みやイベント出店、他店舗とのコラボ営業など精力的に活動している。

 オーナー夫婦に子どもが生まれ、コロナ禍でスタッフの生活スタイルが変わり、拘束が少ない今の営業形態に変更。内藤さんは「実店舗がある時に比べ自由度が高く、多くのことに挑戦できる楽しさがあります。仙台駅に近いので、新規客が増え客層が広がりました」と話す。

「 buzaemonで 飲めるお酒と、う ちの生ハムは相 性抜群なので、 いつかコラボでき たら」と内藤さん
営業中の店内

仙台市青葉区中央1-8-32 名掛丁センター街京屋ビル1階
buzaemon名掛丁本店内
℡070-8426-7043
営/木~日曜11:00~16:00(LO15:00ごろ)

(河北ウイークリーせんだい 2022年6月23日号掲載)

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