ホヤ採った 【特集】ホヤッホ~
海凝縮した味、衝撃
鮮やかな赤にイボイボと2つの突起、宮城が誇る夏の味覚・ホヤだ。食べたことはあっても、生態を知らないという人は多いはず。ウイークリーPR大使を務める「ほやドル」萌江さんと一緒に、漁場を訪ねて、ホヤの「リアル」に迫った。ほやっほ~!
赤い球体が次々と
快晴! 波穏やか! まさにホヤ日和!―の石巻市牡鹿半島・谷川浜で、漁師の渥美貴幸さんが取材陣を出迎えてくれた。
渥美さんの船に乗って約10分、湾内の養殖場に着く。「じゃ、揚げっから」。渥美さんが養殖ロープを、船上のドラムを回転させつつ引き揚げると、海中から巨大な赤いボール状の物体が連なって現れた。よく見るとボールはホヤの集合体だ。
渥美さんは「ボール」から手早くホヤを外し、コンテナに詰めていく。作業中、1つ手に取るとあっという間にさばき「食べます?」。はい、食べますッ!
たった今まで海にいた、透明なオレンジ色に輝くホヤの身。甘みとうまみ、塩味、わずかな苦み、しゃくっとした食感とみずみずしさ…海をまるごと凝縮しておいしくしたような唯一無二の味わいだ。萌江さんも「最っ高!」とはち切れんばかりの笑顔。
幼生集まる「聖地」
今回揚げたのは4年かけて育てた「4よ ねんこ年子」。一般に3年子から流通するが、4年子はより身が厚く体も大きい。
このホヤはどこからやってくるのか? 渥美さんによると、ホヤは貝ではなく脊せ きさく 索動物に分類され、卵からふ化したときはオタマジャクシのような形だそう。泳ぎ回って住みかとなる場所を見つけると、付着し留まる。漁師は幼生(赤ちゃん)が集まる場所にカキ殻を沈めて付着させ、付いたホヤ(「種」)を大事に育てるのだ。
実は谷川浜のある鮫ノ浦湾は、震災前は全国の「種」の約8割を生産し、他養殖地に出荷していた「ホヤの聖地」。「水深と潮の流れが絶妙で、不思議なほど幼生が集まる『奇跡の地形』なんです」
多彩な「トリビア」を聞きながら帰港。「鮮度と温度が命だから」と手を休めない渥美さんに別れを告げ、浜を離れて30分ほどして気付く。「船上で食べたホヤの後味、まだ残ってる」。ホヤってすごい。
ホヤ養殖の流れ
親ボヤ(3年目以降)が年末~年明けに産卵し幼生が誕生。潮に乗って岩場や沈めておいたカキ殻に付着する。春(5月ごろ)に肉眼で見えるサイズに成長したら、1年子=種として出荷もする
秋、1年子の付いたカキ殻をロープに等間隔に付け漁場に沈める。よくできるとカキ殻1個に200個ほど育つ。3年目以降、夏に収穫
おいしいホヤの見分け方
<色>
鮮やかな赤またはオレンジ(色は産地ごとに異なる)。黒ずんでいるものはNG
<身の張り>
パンと張りのあるもの。しぼんでいても触ると張ってくるものは生きている(売り場で触れる場合はお店の許可を得てから!)。最初から硬いものは死んだホヤ
<突起のにおいで分かる⁉>
突起の先をかいで無臭または「磯の香り」は新鮮。ツンとにおったら内部で発酵が進んでいる。クセのある香りを好む人もいるので好みでチョイス
<渥美貴幸さん>
ブランドホヤ「鮮美透涼」で高い評価を受ける石巻のホヤ漁師。ホヤ購入は「ほ屋」から
<萌江さん>
石巻出身・在住の「ほやドル」。「一生ほやドル、ほや道に終わりなし!」とか。最新の活動はTwitterで確認を
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Written by 鶴岡 彩
Photo by 田附 絢也
(河北ウイークリーせんだい 2022年6月23日号掲載)