秋祭り 石巻・北野神社、湊不動沢不動尊 地域に灯り
<神楽に郷愁の念>
東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市長面地区にある北野神社の奉祝祭が25日、同市二子団地の二子東絆会館で開かれた。同団地に移住した長面出身の住民らが訪れ、郷愁に浸りながら神楽を鑑賞した。
新型コロナウイルスの影響で開催は3年ぶり。釜谷長面尾崎法印神楽保存会と北上町女川法印神楽保存会の20~60代の演者10人が、約10演目を奉納した。
日暮れ後最初に奉納したのは猿田彦尊が人・神・地の道を導く演目「道祖」で、闇の中、舞台の明かりが演者を照らし荘厳な雰囲気を醸し出していた。「蛭児」では釣りをする蛭児と魚の駆け引きが会場を盛り上げた。
震災前に長面地区に住んでいた同団地の80代女性は「内容を語れるくらい神楽は地域住民に根付いている」、同市須江に移り住んだ80代女性は「小さい頃から見ているから懐かしい」と話した。
高橋範英宮司は「何かを楽しみに生きた方が良い。コミュニケーションの場の役割も果たす祭りを開催できてうれしい」と語った。
<釜が鳴る、「吉」の兆し>
石巻市湊不動沢山の湊不動沢不動尊で28日、秋季大祭が開かれた。約30人が参拝し、真言宗秋葉山大宝院(石巻市築山1丁目)の天野秀栄住職が参拝者の所願成就と新型コロナウイルスの早期収束を祈念した。
奥の院をご開帳し、釜が発する音の具合で吉凶を占う「鳴釜神事」を執り行った。厄災がある時は釜は鳴らず、新型コロナが流行しだした2020年4月の春季大祭でも釜は音を出さなかったという。
参拝者は熱した釜の上のせいろに米をつかみ入れ、その音でそれぞれ吉凶を占った。「今回は皆さん鳴りました」と堂守の高橋秀雅さん(54)。
同不動尊は結核収束を願い不動明王を祭ったのが始まりで、毎月28日に月参りを開いている。天野住職は「今も伝染病がはやりお祭りも減っているが、ここでは地域の方が祈りを絶やさないよう守っている」と述べた。
不動町町内会の有志でつくる奉賛会などが主催。新型コロナ感染拡大防止のため規模を縮小して開催した。