閉じる

<311むすび塾>利用客の安全確保探る/第106回巡回ワークショップ@仙台銀座親和会

中心部飲食店街の備え

自身の被災体験を披露しながら対策について意見を交わした仙台銀座親和会のメンバー=2022年9月3日、仙台市青葉区中央の平和住宅情報センター
自身の被災体験を披露しながら対策について意見を交わした仙台銀座親和会のメンバー=2022年9月3日、仙台市青葉区中央の平和住宅情報センター
日が暮れて看板に明かりがともった仙台銀座=仙台市青葉区中央

 河北新報社は2022年9月3日、106回目の巡回ワークショップ「むすび塾」を仙台市青葉区中央の町内会「仙台銀座親和会」で開いた。仙台市中心部にあり、飲食店やビルが建つ一角は昼夜問わず多くの人が行き交う。宮城県内で自然災害が頻発する中、町内会役員を中心に経営者や住民ら8人が災害の備えと利用客の安全確保について話し合った。

 東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(40)、東日本大震災を機に同業者らと夜の避難訓練を実施する石巻市の日本料理店「八幡家」おかみの阿部紀代子さん(60)が助言者として議論に加わった。

 震災時、仙台銀座は被害がほとんどなかったという。一方で昨年2月と今年3月に宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震では、グラスや瓶が落ちて割れる被害が相次いだ。

 幹事の「お菜晩酌志ほ」経営古川志穂さん(48)は「お客さんはいなかったが、店内はめちゃくちゃ。自分は動けず、避難するよう声をかけてくれた隣の店主がお客さんを誘導する姿を見て、震災経験者は違うと思った」と振り返った。

 幹事の菊地健さん(46)が経営する「メインバーオークルーム」には地震発生当時、飲食客の姿があった。「カウンターの下に入るよう呼びかけたが、動けない人もいた。お客さんへの対応など、仙台銀座で足並みをそろえてできるものがほしい」と語った。

 阿部さんは震災の津波で店が被災。店を再開した後の2012年12月、営業中に津波警報が発令され、閉店の判断に苦慮した経験がきっかけで、仲間と夜の避難訓練に取り組んだ。

 成果として身を守る行動など利用客への協力要請と、避難誘導など従業員の行動をまとめた「地震・津波対応の心得」を紹介。「1軒で閉店を判断しにくくても、飲食店街でまとまって方針を打ち出すことでお客さんと従業員の安全を確保できる」と強調した。

 備えや課題について、会員間の連絡や情報共有を挙げる声が相次いだ。会計幹事の「味処花夕」経営中鉢祐一さん(67)は「店と自宅が離れていて、災害が起きたら不安だ」と明かす。佐藤准教授は「連絡はLINE(ライン)でグループをつくることから始めてはどうか。災害時に限らず普段からやりとりするといい」とアドバイスした。

 「自分と家族、働く人の命を守り、お客さんをはじめ居合わせた人を助けるのは人が集まる場所の使命」と話すのは、会長で「横山芳夫建築設計監理事務所」社長横山英子さん(59)。看板など設備の老朽化、帰宅困難者の対応、備蓄品の確保といった課題を挙げて「小さな商店街では費用のハードルが高いが、必要と分かった以上はやらないといけない」と述べた。

昭和感漂う飲み屋街/仙台銀座/50年代に2度大火

 仙台銀座はJR仙台駅にほど近い飲み屋街だ。オフィスビルやホテルが並び、都市の新陳代謝が活発な南町通と東二番丁通が交わる一角にありながら、明かりがともった看板が並ぶ小路は、昭和の風情が漂う。

 仙台銀座親和会には42世帯が加入している。大半を和食、洋食、中華、焼き肉、バー、喫茶などの飲食店が占める。

 戦後、仙台空襲で焼け出された物販店などが、長屋で商いを再開したのが起源とされる。1952年と55年に大火に見舞われた。その後、居酒屋などが店を出し、現在の飲み屋街の原型ができたという。

<助言者から>

■ファン巻き込みCFを/東北大災害科学国際研究所准教授 佐藤翔輔さん(40)

 老朽化した看板を改修する費用については、ここだからできるお金の集め方がある。仙台銀座にはファンがたくさんいる。「仙台銀座を守るために」という合言葉で、お店や街を愛する人たちを取り込んだクラウドファンディング(CF)を実施してみてはどうか。

 地震だけでなく、大雨の対策も考える必要がある。災害対応は一人や一つの店舗では難しい。「お客さんに助けてもらっている」という話が出たように、仙台銀座には客の協力が得られる土台がある。仲間だけでなく、ファンも巻き込んで備えを充実させてほしい。

■明かりの事前準備必要/石巻市の日本料理店「八幡家」おかみ 阿部紀代子さん(60)

 夜、電気を消すと考えている以上に暗闇になる。お客さんとスタッフの見分けがつかなかったり、店内を思うように動けなかったり、思いがけないことが起きた。前もってライトや蓄光テープを準備してほしい。

 知らない土地だと、避難場所にたどり着くお客さんが少ないことも実証実験で分かった。避難経路の説明の仕方を仲間で共有することが大事。お客さんと力を合わせて逃げることで、より安全な避難につながる。

 訓練をするときは私も手伝う。仙台銀座は安心して飲んで食べられる場所であってほしい。

<メモ>東日本大震災をはじめとする自然災害の被災体験を振り返り、防災の教訓や課題を考えてみませんか。町内会や学校、職場など少人数の集まりが対象です。開催費用は無料。随時、開催希望を受け付けています。連絡先は防災・教育室022(211)1591

関連タグ

最新写真特集

いのちと地域を守る
わがこと 防災・減災 Wagakoto disaster prevention and reduction

指さし会話シート
ダウンロード

 第97回むすび塾での聴覚障害者や支援者の意見を基にリニューアルしました。自由にダウンロードしてお使いください。

指さし会話シート
みやぎ防災・減災円卓会議