閉じる

2024ニュース回顧 取材ノートから > 女川原発2号機、再稼働 震災後の空白経て発電

運転員が原子炉制御盤のスイッチを切り替え、2号機の原子炉を起動させた=10月29日午後7時(代表撮影)

<不安解消へ情報公開を>

 10月29日夜、東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)が13年7カ月ぶりに再稼働した。巨大な設備は人の力で動かされている。東日本大震災で止まっていた原子炉が動き出して以来、こんな当たり前のことを再認識する場面が増えた。

 再稼働当日、住民や市民団体などが原発周辺で抗議行動を展開した。根底にあるのは不安であり、他の原発とは違いがある。

 2号機は震災被災地に立地する原発で震災後初めて再稼働した。過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初の稼働。福島事故の恐怖がよみがえる人も多い。

 東北電は2号機の再稼働に向け、防潮堤の整備など安全対策工事を5月に完了させた。再稼働による経済効果を期待する声が上がる一方、半島部の1人暮らしの高齢者などには、重大事故時の具体的な避難の在り方などを不安視する意見がまだまだ多い。

 住民の不安は的中する。11月4日、東北電は機器トラブルのため、原子炉を停止させた。わずか6日動かしたばかり。重大事故ではないが、計測関連機器が動かなくなり、作業員の人為的ミスが原因だった。

 再稼働に伴う「13年7カ月の空白」は不安要素の一つとして以前から問題視されていた。機器の不具合を招く可能性のほかに、技術者の習熟度不足も上げられる。原発の技術者約500人のうち稼働時を知るのは約4割だという。

 今月26日、2010年11月に定期検査のため停止して以来、14年ぶりの営業運転再開という節目を迎えた。次の定期検査まで約13カ月運転が続く。女川原発の阿部正信所長は報道陣に「設備を動かすのは人。技術力の維持、向上に努めていきたい」と強調した。

 東北電力は2号機の発電再開を「再稼働」ではなく「再出発」と位置付ける。発電所をゼロから立ち上げた先人たちに学び、地域との絆を強め、福島の事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わる決意を込める。

 課題の一つ、使用済み核燃料は原発外に搬出するめどが立っていない。東北電は原発敷地内で一時保管する「乾式貯蔵施設」を整備するが、立地自治体は「一時的な貯蔵が常態化しないか」と懸念する。

 住民の不安解消のため、積極的な情報公開と発信は最低限の必要事項だ。東北電には地域の信頼を失わないように、今後もより丁寧な対応が求められる。(大谷佳祐)

関連リンク

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ