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子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(26) 毎日が介護実習 祖母と暮らし、経験積む

食事の時間になり、寝室からレツさんを連れて来るしお音
実家で、障がいのある妹英理香の手を引くあま音(右奥)としお音(右手前)。転ばないようにと2人がかりで手を引いていました

【石巻市・柴田礼華】

 同居する夫の母レツさん87歳は、目が不自由です。緑内障の進行で、右目は視力ゼロ。左目は残っている視野が10%で、常に障子の穴から世界をのぞいている状態のようです。

 そもそも緑内障を発症したのは50代後半の現役看護師長時代。勤務中に突然目が見えなくなり、救急搬送されたそうです。手術もしたそうですが、完治は難しく、その後もゆるやかに病状は進行していったようです。

 5年前までは左目は見えており、日中はルーペ片手に新聞を読み、炊事洗濯などの家事もこなしていたのですが、認知症を発症したのを機に、視力低下もぐっと進んできた印象です。

 見えないだけならともかく、忘れてしまうので、自分が行きたい場所に行けなくてしょっちゅう家の中をさまよっているレツさん。基本は義父せんじい(先生おじいさんの略)がお世話をしているのですが、せんじいがトイレに入っている時や、私が料理中で手が離せない時、夫が仕事で不在の時、5歳のあま音と1歳のしお音が戦力になってくれています。

■娘2人が「戦力」

 「あまちゃんお願い、おばあちゃんおトイレに連れてってー」「しおちゃん、せんじいのところにおばあちゃん連れてってー」と頼むと、ある時はあま音が、ある時はしお音が、レツさんの手を引いて案内してくれます。たまに「早い、早い、ゆっくり歩いて」と引っ張られたレツさんがよろけそうになることもありますが、2人ともちゃんと目的の場所へ連れて行ってくれます。

 そういえば私も4人きょうだい、父母、祖父母との大家族の暮らしの中で、体が不自由な妹(次女)の手を引いて歩くことや、腰が悪い祖母の荷物を持つことは当たり前でした。末っ子の弟が高校生の頃、障がいのある次女と手をつないで駅の階段を上り下りしている様子を見た知人が、後日母に「年頃の男の子がお姉さんと手をつないで歩くところを見られるのは恥ずかしいだろうに、自然に介助している姿を見て感動した」と話したことがあったそうです。

■援助、当たり前に

 正直その話を聞いて、われわれきょうだいも母も「転びそうな人の手をつなぐのは当たり前よね。むしろ手をつながん方が危な過ぎる!」と口をそろえて話した記憶があります。私の実家岡藤家では恥ずかしさより何より、自分がやらなきゃ誰がやるの!という状況に置かれることが多かったため、困っている人がいると自然と体が動く仕様になっているようです。下の妹(三女)も現在、訪問介護の仕事をしています。

 レツさんの手を取って廊下を歩くあま音、しお音の姿を見ては「ああ、この人たちはこうやって毎日自然に介護の経験値を積んでいるんだなぁ」と感じています。

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