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子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(27) ただいま、おかえり 離れて感じた家族の愛

山口と石巻をテレビ電話でつなぎました。画面の中のせんじいに喜ぶあま音としお音
山口から帰宅した日、レツさんに寝る前のごあいさつ。孫たちのにぎやかな声は、レツさんにとって安心できる響きのようです

【石巻市・柴田礼華】

 われわれ夫婦と、5歳の長女あま音、1歳の次女しお音の柴田家ヤングチームは、年末年始の約2週間、私の地元山口県に帰省し、このたび石巻に戻ってまいりました。

■老夫婦は留守番

 数年前までは、同居する義父せんじい(先生おじいさんの略)86歳と、義母レツさん87歳も一緒に温暖な山口で年越しをすることが多くありました。ですが、3年前の山口滞在中にレツさんが脳梗塞を発症して年越し入院をし、去年と一昨年にはせんじいが吐血したり肺気胸になったりで入院を重ねており、健康上の不安から、今回2人の長距離移動は避けることにしました。

 かといって、山口で暮らす私の母やきょうだいに娘たちの顔も見せたいし、ここ10年以上、私の実家が経営するホテルの玄関飾りはわれわれ夫婦が制作するのが恒例になっています。そこで、ヤングチーム不在の間、せんじいとレツさんは介護施設のお泊まり制度「ショートステイ」を活用することにしました。

 われわれが不在となる全ての日数をショートステイでカバーするのは介護保険の制度上難しいため、前後数日ほどは、せんじいとレツさんの2人で生活することに。普段通り日中はデイサービスも利用しつつ、近くで暮らす義理の姉や、日頃からお世話になっている家事援助サービスの方、柴田家によく遊びに来てくれる友人知人など、いろんな人が訪れてくれ、それなりににぎやかに過ごしていたようです。

 山口帰省の間、時々山口と石巻でビデオ通話をしました。あま音、しお音も画面越しに見えるせんじいとレツさんの姿を見て「せんじい!」「おばあちゃん!」と喜んでいました。ほとんど目が見えないレツさんも孫たちの声を聞いて「あまちゃん、しおちゃん、早く帰っておいで」と声をかけていました。スマートフォンの通信アプリを使いこなすせんじい。身内ながらすごいなぁと思います。

■自宅戻り異変も

 一見無事に終わったように見えるショートステイですが、自宅に帰ってからレツさんに異変がありました。5年前に認知症を発症してからというもの、自宅にいても、いつもどこかに外出している気がして落ち着かないことが多いのですが、ショートステイから帰ってきた直後は特にそれがひどかったというのです。「早く家に帰ろう」と、何度もせんじいや夕方訪れた義理の姉に繰り返したり、「なんでこんなに張り紙いっぱいしてあるの!」とありもしない張り紙に怒りだしたり、なかなか大変だったそうです。これまでも、不安に感じる時間を長く過ごした後は、反動からか怒りっぽくなったり、幻覚が見えたりする傾向があります。

 私たちが帰宅して、にぎやかな娘たちの声を聞いたら安心したのか、温厚なレツさんに戻っていました。「落ちたら危ない!」とレツさんにだけ見えない川が見えていて孫たちのことを絶えず心配していましたが、それも愛ゆえのことでしょう。

 また今年も泣いて笑って…にぎやかな日々が始まります。

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