閉じる

<311むすび塾>すべきこと 事前に検討/第99回巡回ワークショップ@多賀城高

「タイムライン」避難に活用

避難開始のタイミングなどを記し、タイムラインを完成させる生徒たち
東日本大震災や昨年の台風19号などの体験や教訓を共有し、備えのアイデアを出し合った=2020年11月11日、宮城県多賀城市の多賀城高
砂押川で津波の脅威を学ぶ多賀城高生=2017年12月8日

 河北新報社は2020年11月11日、通算99回目の巡回ワークショップ「むすび塾」を多賀城市の多賀城高で開いた。災害科学科の1年生8人が、東日本大震災と昨年10月の台風19号などの体験を踏まえ、風水害の危険が迫った場合の自分と家族の避難行動について専門家と意見を交わした。

 豪雨災害への備えを時系列で決めておく予定表「タイムライン」の作成キットを発行した東京法令出版の東北支社長で防災士の杉山克洋さんが助言者を務めた。タイムラインの意義を「風水害は気象情報が出てから災害が発生するまで一定の時間がある。避難先や避難行動を前もって考えることが命を守る行動につながる」と語った。

 生徒は事前にハザードマップで浸水深や土砂災害など自宅周辺の災害リスクを調べ、家族と警戒レベルごとに誰が何をするのか、相談をして参加した。下調べで分かったことも。菊地優衣さんは「避難先の第2候補に考えていた施設が、風水害では避難所にならないと知った」と話した。

 ハザードマップを使う際の注意点として、杉山さんは「マップは一つの災害想定を基にしている。想定以上の事態も起こり得ると頭に入れてチェックしてほしい」と助言した。

 生徒たちは会場でそれぞれのタイムラインを完成させた。避難準備から開始のタイミング、避難完了までの家族の役割や動きを発表。「同居の祖父母は先に避難する必要があるので、早めに持ち物を確認する」「情報収集や家電の操作は、扱いが得意な自分が担当する」などと説明した。

 亀山俊斗さんは近くの指定避難所ではなく、神社を避難先に選んだ。「神社は避難所よりも高い場所にある。家族と話し合って決めた」と理由を挙げた。

 杉山さんは「避難経路を実際に歩いてみて、課題がないか確認することも大事だ。別の避難先やルートも試して」と求めた。

 新型コロナウイルスの影響で、避難所での感染症対策の重要性が高まっている。鶴喰(つるばみ)裕貴さんは「避難所に行く前に家族全員が体温を測って健康状態を確認したい」と述べた。

 生徒は互いの発表を聞いて被災体験や備えのアイデアを共有した。杉山さんは「自分で考えるだけでなく、家族や仲間と話し合うことで、新たに気付くことがある。作ったタイムラインの見直しを続けて、自分と周りの人の命を守ってほしい」と呼び掛けた。

災害科学科 2016年に誕生/防災の視点で科目再構成

 多賀城高災害科学科は、東日本大震災の教訓を次世代に伝え、将来の災害から命と暮らしを守る人材を育成しようと、2016年に開設された。防災系専門学科は阪神大震災被災地の兵庫県舞子高(神戸市)に次いで全国2例目。

 定員は各学年40人。生徒は普通科の既存科目を防災の視点で再構成した「自然科学と災害」「実用統計学」など、約30単位の独自科目による理系カリキュラムを履修する。

 家庭基礎と保健を組み合わせた1年生の「くらしと安全A」、社会と情報による「社会と災害」は普通科の生徒も履修し、学校全体で災害対応能力の向上に取り組んでいる。

 東北大をはじめ各地の研究機関と連携し、専門家を招いた講義やフィールドワークを行う。1年は塩釜市の浦戸諸島、2年は栗原市の栗駒山麓ジオパークなどでの野外実習を通じた課題研究を行って発表。舞子高をはじめ、防災をテーマに国内外との交流も盛んだ。

 出身中学は多賀城市内を中心に、仙台市や塩釜市など広範囲にわたる。ほぼ全員が自然科学系学部をはじめとする大学進学を希望する。自衛隊、看護学校に進む生徒もいる。

<助言者から>

■緊迫の状況下 道しるべに/東京法令出版 杉山克洋さん(50)

 自然は私たちに恵みをもたらす一方、脅威にもなる。いざという時に正しく行動し、自分や家族、友人の命を助けるには、事前の準備が必要。タイムラインの作成は、地域のリスクを理解し、緊迫した状況下で行動する道しるべとなる。

 まずは自分でタイムラインを考え、仲間や家庭に伝えて話し合おう。新たに気付くことがあるはずだ。そして頻繁に見直すこと。自然は想定を超える可能性もある。脅威をやり過ごし、大切な人の命を守る。今回、話し合ったり考えたりしたことを日々の学習や生活に役立ててほしい。

<メモ>東日本大震災をはじめとする自然災害の被災体験を振り返り、防災の教訓や課題を考えてみませんか。町内会や学校、職場など少人数の集まりが対象です。開催費用は無料。随時、開催希望を受け付けています。連絡先は河北新報社防災・教育室022(211)1591。

関連タグ

最新写真特集

いのちと地域を守る
わがこと 防災・減災 Wagakoto disaster prevention and reduction

指さし会話シート
ダウンロード

 第97回むすび塾での聴覚障害者や支援者の意見を基にリニューアルしました。自由にダウンロードしてお使いください。

指さし会話シート
みやぎ防災・減災円卓会議