閉じる

<記憶の素描(28)芥川賞作家・石沢麻依>カポーティの白バラ

 薄く雪に包まれたアパートの中庭に、絵の具のチューブが幾つか凍りついたまま転がっていた。中身が絞り尽くされたそれは、干からびた虫の死骸にどこか似ている。子供が遊び、時には日曜画家も姿を見せるその場所で、置き去りにされたものを見かけることがたまにある。しばらくたてば誰かが片づけるが、その絵の具だけはい…

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

ライブカメラ