最適な課題選び訓練を/肢体不自由リハビリテーション科科長 出江紳一教授
病気やけがで身体を動かすことが難しくなったとき、誰もが少しでも早く回復したいと望むことでしょう。けれども実際には時間がかかることがあり、その間に脳の中で「身体を使わない」ということが学習されて、それがさらに回復を阻害する現象が知られています。これを「学習された不使用」、あるいは「学習性不使用」と呼びます。
<「不使用」を学習>
例えば脳卒中で左右どちらかの大脳の血管がつまったり出血したりすると、反対側の手足にまひが起こります。回復の仕方は、脳卒中の部位や程度、患者さんの年齢やそれまでの持病などによりさまざまですが、まひしている期間の間に学習性不使用が生じます。その結果、病状が落ち着いて回復する潜在能力があるにもかかわらず、脳は動かないことを学習してしまっており、本来の運動能力を発揮できない事態に陥ります。
学習性不使用を脱し、運動を学習するために、さまざまな訓練や刺激が用いられます。この時に脳で起こる変化は、神経回路の組み換えであり、そのような組み換えが起こる性質を「神経系の可塑性」といいます。運動学習は脳の可塑的変化に基づいており、脳の可塑的変化の起こり方には次の二つの原則があります。一つ目は、課題特異性といって、訓練した動作が上手になることをいいます。二つ目は、用量依存性といって、十分な強度の訓練を反復したその回数に応じて上手になることをいいます。
<補助装具も使用>
これらの原則を踏まえて実際の訓練メニューを組み立てる際には以下の要素を組み込むように配慮します。(1)さまざまな日常生活動作に共通する基本的な運動の練習(2)本人にとって意味のある活動を行うために必要な運動に特化した練習(3)道具の使用を含めて実際の環境の中での多様な練習(4)練習の難易度の調整(ぎりぎり可能な難易度の運動を練習する)(5)フィードバック(言葉やセンサーを使って運動の過程や結果の情報を本人に伝える)(6)動機付け。
練習の補助に装具や電気刺激が使われており、最近では訓練アシストロボットも登場しました。東北大学病院肢体不自由リハビリテーション科では株式会社IFGと共同で末梢神経磁気刺激装置を開発し既に臨床で使用しています。この装置はほとんど痛みのない方法で衣服の上から四肢を刺激して筋肉を収縮させることができます。
以上、学習性不使用という目にみえない病態があること、およびそれを克服するために行うリハビリテーション治療の考え方と方法を述べました。運動学習のリハビリテーション治療は特定の手技で完結するものではなく、課題指向的に手段、環境、心理を考慮して実施する治療システムであるといえます。
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