<あなたに伝えたい>娘と桜 成長見守って

大和さんの家族が化女沼の近くに植樹した桜の成長を確かめる佐々木さん=大崎市

佐々木哲朗さん(宮城県大崎市)から大和正弘さんへ

 大崎市で飲食店を経営する佐々木哲朗さん(68)が、東日本大震災で亡くなった友人の大和正弘さん=大崎市、当時(47)=を悼んでいる。大和さんは家族と避難していた車の中で突然死した。死因は突発性の不整脈。3カ月後、震災関連死に認定された。

 佐々木さんは経営する大崎市のパブで震災に遭った。停電が続く中、ラジオを聞きながら片付けをしていた。「ヤマト・マサヒロさん」。3月11日午後11時すぎ、アナウンサーが読み上げた名前が耳に入った。震災の犠牲者だという。

 家族に連絡し、大崎市民病院に駆け付けた。遺体安置所で静かに横たわっている大和さんの姿を確認し、別れを告げた。

 大和さんの家族によると、あの日は長女が誕生してちょうど100日目。「帰ったらケーキを買ってお祝いしよう」。こう言い残し、業務員として働く大崎市古川中に向かった。

 午後2時46分、学校で大きな揺れに見舞われた。上司に「家族が心配だ」と告げ、早退して自宅に戻った。

 ひっきりなしに大地が揺れる。妻と長女の3人で自宅前に止めた車に避難した。しばらくすると大和さんは急に静かになった。妻が何度呼び掛けても意識は戻らなかった。

 救急車の到着が普段より大幅に遅れ、搬送先の市民病院で死亡が確認された。死因は、突然死を引き起こす危険な不整脈として知られる「特発性心室細動」だった。

 佐々木さんと大和さんとの出会いは今から30年ほど前。客として来店してくれたのがきっかけだ。大和さんは仕事の傍ら空手道場を開き、子どもたちの指導に情熱を傾けていた。「娘が2歳になったら空手を教える」。成長を楽しみにしていた。

 1999年、市内の化女沼周辺を桜の名所にしようと、佐々木さんらがボランティア団体「化女沼2000本桜の会」を立ち上げた際は創設メンバーになってくれた。

 化女沼周辺の清掃活動で投棄された冷蔵庫やタイヤを見つけ、「こんな大物が出てきた」と自慢げに担ぎ上げる姿を覚えている。「力持ちで、誰からも好かれる金太郎のような人だった」と懐かしむ。

 桜の会は2012年4月、「鎮魂の桜」と名付け、苗木60本を植樹して震災の犠牲者を追悼した。大和さんの長女の名前を書いたプレートを付け、家族に植えてもらった。

 当時、高さ1.2メートルだった苗木は約5メートルまで成長し、長女は9歳、小学4年生になった。この春、長女から「桜の花が咲くと、お父さんのことを思い起こす」と言われ、胸が熱くなった。

 「元気に成長した娘と桜をこれからも見守って」。桜の手入れに訪れるたび、佐々木さんは心の中で手を合わせている。
(報道部・宮崎伸一)

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あの日奪われた最愛の人を、片時も忘れられない人たちがいる。悲しみに暮れ、喪失感にさいなまれながらも、きょうを生きる。「あなたに伝えたい」。家族らの思いをつづる。


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