<仙台いやすこ歩き>(127)フルーツサンド/ハレの日彩る大人の味

 たまに変化を求めていくところがある。ビジネスホテルの喫茶コーナーで、お目当てはフルーツサンド。ところが久~しぶりに行ったらメニューから消えている。またしてもなくなったとしょんぼり。というのは、かなり昔に仙台市青葉区の南町通にあったパン屋さんで、よく買っていたのがフルーツサンドだったから。

 そんな話を画伯にしたら、「大丈夫、あるよ」とあっさり。最近の情報だという。早速出動、とばかりに向かった先は、仙台駅前のアエル(青葉区)の2階にある「ホシヤマ珈琲(コーヒー)店」だ。

 入った途端気分は一変。広々とした店内には丸いテーブルとイスがゆったりと配置され、真ん中に置かれたシンボルツリーならぬシンボル生け花の大きな枝ぶりが優雅な空気を発しているかのよう。正面に長いカウンターがあって背後には美しくコーヒーカップたちが並ぶ。席へと案内されながら思わず発した「すごっ。あのカップはいくつあるのかしら」に「千客万来にかけて千客あるんですよ」と教えてくれたのが渡辺義範さん(57)さんで、後で聞けば支配人さんだった。

 まずはメニューの「フルーツサンド」をお願いし、カウンター内での仕事も見せてもらうことに。フルーツサンド自体は朝一番に作られていて、一皿分ごとにラップされて冷蔵庫に入っている。それを丁寧にカットすると現れる断面の美しいこと、みずみずしいこと。

 席に戻ればまずコーヒーが出て、そしてフルーツサンドの登場。ロイヤルコペンハーゲンのお皿に盛られたそれは、かわいらしい気品をまとい、食べるのがもったいない。とはいってもいやすこ。パクリと食べれば、ふんわりシルキーなパンの中に、甘過ぎないクリームに挟まれた果物のフレッシュな酸味も効いてう~ん。「コーヒーに合う」と2人とも満面の笑みだ。

 渡辺さんにお話を伺う。三越向かいにある本店は今年で31年目、ここアエル店は21年目。エレガントな珈琲店で知られる同店で、フルーツサンドがお目見えしたのは今年の7月30日だそう。「新型コロナで休業の期間、何ができるかをみんなで考えました」。まず仙台発となる最高級食パンを作ることから始まり、食パンをおいしく味わっていただくメニューとして誕生させた一つが、このフルーツサンドということだ。

 「希少な小麦・はるゆたかを主原料とした食パン自体の自然な甘さを感じていただきたいと、クリームの甘さは控えました」。お客さまの年齢層も高いので、甘くない方がいいのではという意見もあったそうだ。お店が閉まっている間も、皆さんが情熱を傾けてメニュー作りに励んでいたことが想像される。サンドされたおいしい層は、カスタードクリーム、オリジナルのホイップクリーム、色・形・味のバランスよいイチゴ、キウイ、オレンジ、そしてお店の皆さんのおもてなしの思いだ。

 「記念日や特別な日にご利用いただくことが多いのです」と、穏やかな笑顔で話してくれる渡辺さん。そうだ、ハレの日をつくってまたこの空間に、1日5食限定というハレのフルーツサンドを食べに来よう。

◎略した呼び方は日本だけ

 サンドイッチを発明したのがイギリスのサンドイッチ伯爵で、18世紀のことだ。カード賭博に熱中し、トーストパンにコールドビーフを挟んで片手で食べていたことに始まる。サンドイッチ伯爵の11代目にあたる子孫の人がサンドイッチチェーン店をイギリスにオープンし、ラスベガスにも進出しているそうである。日本に伝わったのは1884(明治17)年、イギリス人によるもので、鹿鳴館時代には大流行となった。

 フルーツサンドイッチは、サンドイッチ用のパンにフルーツと生クリームを挟んだもので日本のオリジナル。大正から昭和初期の頃には既に誕生していたといわれる。また、サンドイッチをサンドと呼ぶのも日本だけだ。

 ちなみに青葉区の壱弐参(いろは)横丁で1974(昭和49)年から2015(平成27)年まで41年間営業していたコーヒーショップ・ニューエレガンスは、ホシヤマ珈琲店の前身ともいうべき店。フルーツサンドはアエル店のみの取り扱いとなっている。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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仙台いやすこ歩き

土地にはその土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター・みうらうみさんとイラストレーター・本郷けい子さんが仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


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