私の故郷は「終着駅」の向こうにある。作家の宮脇俊三さんが旅情を誘う終着駅として挙げた国鉄・日中線の熱塩駅。福島県会津の喜多方-熱塩間を往復していたが、5歳の時、廃線となった。
その2年後、記念館となった駅舎の脇を通って小学校に通い始めた。全校児童は120人余り。友だちと別れ、1人で歩く帰り道は退屈で、本を読みながら歩く芸当を身に付けた。
ある日、いつものように本を読んでいると、肩に子猿が飛び乗った。それは珍しい出来事だったけれど、私は騒ぐこともなく、上手に肩車する子猿を乗せて再び本を読み始めた。
日常は自然の中にあった。家の裏には川が流れ、男の子が「ヤス」を構える傍らでジャバジャバと魚を追い込む端役を担う。澄んだ川の中、うろこに反射する光がきれいだった。
10歳の時、その川の上流にダムができた。大人たちは「洪水がなくなるし、田んぼの水も安心だ」と喜んだ。いつの間にか川で遊ぶことも減り、高校に入る年、街の近くに引っ越した。
十数年前、仙台で暮らし始めると、帰省のたびに「故郷」を見掛けるようになった。山形と福島を結ぶ国道121号線、そこはかつて日中線の延伸計画が立てられたルートだった。
山をくりぬいた国道から「終着駅」の向こう側を見下ろす。家の配置は、30年たった今もほとんど変わらない。それでも私をはじめ、多くの若者が故郷を離れた。
小学校の全校児童は40人ほど。田んぼを耕す人は高齢化し、耕作放棄地にしないためにどんなに安く売ろうとしても、信頼できる買い手はつかない。
一度だけ、故郷の川を見に行ったことがある。小さな橋の上から、かつて遊んだ川をのぞく。そこには、水量が減って表面が緑色に染まった石があった。それは、遠くから見ただけでは分からない「時」の流れだった。
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