津波に洗われた仙台市沿岸部のコメ生産者は今も、劣化した作土と格闘する。
1982年から宮城野区岡田地区でコメ作りする農事組合法人の新浜協業組合。耕作していた約50ヘクタールが東日本大震災の津波をかぶり、がれき撤去や除塩のため、作付けが3年間できなかった。2014年に作付けを再開し、現在は約55ヘクタールで水稲を生産するが、地力の低下は明白だった。
組合長の平山尚さん(81)は「海に近い耕作地は元々砂質の土壌だが、何十年もかけて作物の根などが堆積し、農業に適した土が育まれてきた。津波はそうした層を流し去ってしまった」と残念がる。
東北農政局もこうした現状を把握し、市沿岸部の全域に別の地区から土を運び込む「客土」を行っている。だが、生産者はあまり効果を感じていない。
平山さんは「代かきしてもすぐに土壌が固くなる。水持ちが悪いので、肥料も除草剤も余計に使わないといけない。トラクターなどの農機具を使えば、まるで砂地のやすりをかけているように部品が摩耗する」とため息をつく。
営農再開への一歩を踏み出す矢先、津波とは別の「荒波」が組合を襲った。
震災から2年半後の13年末、国は減反政策を18年に廃止する方針を打ち出した。およそ半世紀続けた国策の大転換。政府は経営力ある生産者の育成に向けて「攻めの農業」をうたい文句にした。
だが、先行きが不透明になったと感じた被災地の生産者の多くは「まだ競争のスタートラインにも立てていない」と困惑した。
組合は今、必死に経営安定への努力を重ねる。19年に外食・中食向けの多収穫米「ゆみあずさ」の生産を始めた。「ひとめぼれ」などのブランド米は価格が一定しないが、ゆみあずさは作付け前に売値が決まっており、収入の計算が比較的しやすい。
20年産米の価格は、新型コロナウイルスによる業務用需要の低迷で、6年ぶりに下落した。国は需給を引き締めるため、主食用からの用途転換を促す。これに応える形で、組合は急きょ主食用に作付けした9ヘクタールを米粉用に振り向けた。
「国はずるい。減反廃止になっても結局は自主減反せざるをえない」。被災農業者を翻弄(ほんろう)し、結局は何のメリットをもたらさなかった「変革」に平山さんはうんざりした表情を見せる。
生産、経営の両面でコメ作りの環境は震災前より厳しくなった。「どれだけ考えてもここを再生するには稲しかない。そのために稲作をしている」。岡田地区の田んぼが黄金色に染まった秋、平山さんは変わらぬ稲作への愛着を口にした。
[減反政策]1971年から本格実施された国によるコメの生産調整。麦、大豆など転作作物への助成、産地への生産数量目標の配分が政策の柱だった。2010年からは減反協力農家に10アール当たり1万5000円のコメの直接支払い交付金も支払った。18年の減反廃止で同交付金はなくなったが、転作への国費助成は継続。生産数量目標は、各都道府県や農協グループが「生産量の目安」と名称を変え、提示している。
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