河北春秋(12/5):芥川龍之介が子ども向けに書いた短編小説『…

 芥川龍之介が子ども向けに書いた短編小説『蜘蛛(くも)の糸』を読んだことがある人は多いだろう。地獄に落ちた泥棒の男が一度だけクモを助けたことから、釈迦(しゃか)が1本のクモの糸を垂らして手を差し伸べる▼「この糸は俺のもの。下りろ」。眼下の罪人たちがクモの糸に群がるのを見た男がわめくと、糸は切れる。いかなる境遇の者であろうと、もし助かるならば、目の前の細い糸に思わずすがりつきたくなるだろう▼そんな一筋の光明すらも、今の日本にはないのだろうか。今年に入って自殺者が増えている。特に女性の増加が顕著で、10月は前年の約1.8倍。40歳未満は約2.3倍にも達した▼この異常事態は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きい。女性は非正規雇用が多いとされ、失業や休業で生活苦にあえぐ。休校により、子育てや家事、育児、仕事の負担がのしかかり、追い詰められた人もいるとみられる。どの理由もやりきれない▼クモの糸は引っ張り張力に優れ、2.6ミリの太さがあれば600キロまで耐えられるという。「第3波」の到来で、菅義偉首相が強調する「自助」では限界に来ているだけに、窮状をしのぐことができる丈夫なクモの糸のような「公助」の拡充を。ぐずぐずしていると、この国は本当に大変なことになる。(2020.12.5)

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