気になる症状 すっきり診断(91)手足の震え/異常な動き見極め治療

イラスト・叶悦子

◎東北大病院 脳神経内科副科長 長谷川隆文准教授

 多くの皆さんは激しい怒りや緊張に伴い手足がわなわなと震えたり、寒さを感じて全身がゾクゾクしたりする経験をされたことがあるかと思います。身体の一部が規則正しく震える症状のことを医学的には振戦といいます。健常人に見られる身体的・精神的なストレスによる一過性の震えは生理的振戦と呼ばれ、誘因がなくなれば自然と治まります。

 一方で、リラックスしてじっとしている時や字を書いている時、食事など日常生活での活動中に震えの症状が繰り返し、あるいは持続して見られる場合は病的な可能性があります。震えを含めた身体の動きの異常を的確に診断し、治療方針を決定するのは私たち脳神経内科医の役割です。

■加齢に伴い増加

 病的な震えの誘因で最も多いのは本態性振戦です。本態性とは「原因が特定できない」という意味で、簡単にいうと原因のよく分からない震えということになります。あらゆる年齢層に見られますが、加齢とともに増える傾向があり、時に家族性の発症を認めます。典型例では箸を使った時やコップを持った時など、一定の姿勢・動作をした際に手に細かい震えが生じます。頭部や顎、声の震えを伴う方もおられます。

 また、中高年以降に出現する震えの原因として頻度の高いものにパーキンソン病があります。運動のコントロールに重要なドーパミン(ドパミン)と呼ばれる物質が脳内で不足する結果、安静時に目立つ左右差のある手足の震えが生じると同時に、動作緩慢や筋肉のこわばり、歩幅が小さくなるなどの症状が見られるのが特徴です。ドパミン補充により症状は改善されますが、治療開始が遅れると予後が悪くなることもありますので早く症状に気付くことが大切です。

■疾患や薬が誘因

 このほか、平衡機能をつかさどる小脳の異常や糖尿病などに伴う末梢(まっしょう)神経障害が原因で手足の震えが見られることがあります。若い方で細かい作業時などに手先の震えを認める場合、多くは先に述べた本態性振戦ですが、時に甲状腺機能亢進(こうしん)症などの疾患が隠れている場合があり注意が必要です。その他、留意すべきものとして、胃薬やぜんそくの薬、精神科の薬の副作用として出現する震えがあります。薬剤性の震えの多くは薬を減量・中止することで改善されます。

 このように震えの原因は脳神経疾患に限らずさまざまです。治療法は疾患ごとに異なりますので、まずはしっかりと診断を受けることが大切です。原因不明の震えでお困りの際は、お近くの脳神経内科の先生にご相談ください。

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