河北春秋(12/12):江戸の浮世絵師、葛飾北斎の代表作『富嶽三…

 江戸の浮世絵師、葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』の中の1作に『尾州不二見原』がある。画面中央の巨大なたるの中で職人が板をやりかんなで削っていて、その向こうに富士山が小さく見える。たるの左側には「たが」が描かれている▼たがは金属や竹でできた輪で、たるやおけを作る際、円形に組んだ木板の外側にはめて固定する。緊張が緩んだ際に使われる「たがが緩む」はこれから来ている▼新型コロナウイルスの「第3波」が広がる中で政府が呼び掛けた「勝負の3週間」が終盤を迎えた。その間、新規感染者数や死者数が過去最多を更新する日が続いた。コロナに対する警戒心というたがが一度緩んだ結果を数字は如実に示す▼政府は「Go To トラベル」事業の一時的な全面停止になかなか踏み切れない。経済を止めないためのアクセルと、感染防止策のブレーキを同時に踏み続ける。そのことが中途半端な結果をもたらしてきたと多くの人が感じているのに▼北海道旭川市に自衛隊が派遣されたのをはじめ各地で医療崩壊の危機が迫る。「感染防止策は、コロナ禍を乗り切るための最大のアクセル」。日本医師会会長の言葉に正面から向き合い、もう一度たがをきつくはめ直さないと、年末年始を安心して迎えることはできない。(2020.12.12)

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