社説(12/21):福島12市町村将来像/廃炉作業の完了が大前提

 東京電力福島第1原発事故で被災した福島県内12市町村の中長期の将来像として、復興庁の有識者検討委員会が原発事故から30~40年後の在るべき姿を示す新たな提言を策定している。

 未曽有の過酷事故から来年3月で10年の節目となり、前回の提言から5年が経過したことを踏まえた対応。11月下旬に公表された提言の概要からは、被災市町村間で復興格差が拡大する現状が浮かぶ。

 12市町村は原発事故後に避難指示などが出され、避難区域が県土に占める面積は最大12%に達した。

 このうち広野町が2012年に避難指示を解除したのを皮切りに14年に田村市都路地区、15年に楢葉町、16年に川内村と南相馬市小高区、17年には川俣町山木屋地区で国が全域の避難指示を解除した。

 一方で9年9カ月が経過した現在も富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村に県土の2・4%の帰還困難区域が残る。

 全域が解除された旧避難区域は住民帰還が進み、居住人口は原発事故前に比べ都路地区で84%、川内村も81%に回復した。これに対し双葉町は今年3月にJR双葉駅周辺などが解除されたばかり。住民はなおも避難を強いられる。

 復興格差の現実については検討委も「復興の進捗(しんちょく)には差がある」と認識する。その上で提言概要では、目指すべき基本的方向に(1)移住・定住促進や交流・関係人口拡大(2)創造的復興-などを掲げた。

 将来像はあくまで第1原発の廃炉が前提となる。提言概要は30~40年後、「誰もが心配する必要がない十分に安全な状態が確保されている」と青写真を描く。

 そもそも「30~40年」は東電と国が廃炉工程表でうたった作業完了時期だが、気掛かりな指摘がある。

 日本原子力学会は廃炉作業が完了し、敷地が再利用可能になるには最短でも100年以上かかるとする報告書をまとめた。汚染された土壌や地下水の処理、撤去といった敷地の修復に時間がかかることが作業の長期化の要因だ。

 建屋や設備を撤去後すぐに修復に着手すると大量の放射性廃棄物が発生し、全6基の廃炉によって計約780万トンが見込まれる。高い放射線量が下がるのを待って作業に着手したり、一部の施設や土壌を残したりすれば廃棄物は減るが、敷地再利用までには百数十年~数百年必要という。

 報告書は(1)施設や廃棄物を全部撤去するかどうか(2)放射線量の低減を待つかどうか-で四つのシナリオを検討。廃炉が目指すゴール「エンドステート(最終的な状態)」を関係者が共有する大切さにも言及した。

 廃炉は最重要工程の溶融核燃料(デブリ)の取り出しが21年内に予定されている。取り出しの成否に、被災地復興が懸かっていると言っても過言ではない。

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