社説(12/31):コロナ禍の投資先/社会課題の解決を選択肢に

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。年末に向け、医療崩壊や企業の経営破綻、失業者の増加が深刻化してきた。国や地方自治体の財政出動の必要性ばかりが叫ばれるが、危機の深さと広がりは「公助」だけでカバーできないのではないか。

 調和の取れた持続可能な成長を目指す企業を投資対象とする「ESG投資」を、コロナ危機に活用する動きが世界的に広がっている。社会的利益と経済的利益の両立を目指す投資手法は、新たなイノベーションを喚起する可能性がある。普及、拡大に向け官民で知恵を絞りたい。

 今年10月、中国銀行(岡山市)がコロナ禍の影響を受けている事業者支援に使途を限定した「ソーシャルボンド(社会貢献債)」を地銀で初めて発行して注目を集めた。

 総額100億円で償還期間は10年。調達資金は新型コロナの影響で資金繰りが悪化した中小企業への融資などに充てられる。銀行にとっては融資枠を増強しつつ、自己資本比率の維持が図れるメリットがある。

 社会貢献債は環境、社会、企業統治への取り組みを重視する「ESG投資」の一種で、購入者は機関投資家が中心。2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」達成への貢献をベースにした投資手法だ。ただ、その達成には年間約2・5兆米ドルの資金が不足するとされている。

 コロナ危機であらわになったのは貧困や格差など、もともとあった社会的矛盾の先鋭化だ。SDGsの合言葉が「誰一人取り残さない」である以上、社会の一構成員である投資家も社会変革への参画を求められるのは当然だろう。

 目先の浮利を追うのではなく、持続可能な経済を意識して投資することはいまや合理的な選択でもある。ESG投資の全てが利益に直結するわけではないが、超低金利下で運用先探しに苦労している機関投資家のニーズにマッチしたことも見過ごせない。

 日本生命保険など生保主要4社が核兵器製造・関連企業への投融資を自制していることが分かった。非人道兵器の廃絶を後押しする狙いがある。来年1月に核兵器禁止条約が発効すれば、こうした流れが加速する可能性がある。

 武器やギャンブルといった業界を資産運用の対象から外させ(ネガティブスクリーニング)、クリーンエネルギーや教育、医療などに振り向けさせるには株主や世論の後押しが必要だ。投資家側も情報公開や市民社会との対話を通じた企業統治が求められる。

 経済産業省は今年8月、コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、企業と投資家に対して5~10年後の長期的な社会変化を見据えた対話を促す指針をまとめた。ESG投資はその大きな柱になっている。危機にあって、利他が多利を生む好循環を構想したい。

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