社説(1/23):核兵器禁止条約発効/保有国に放棄促す圧力に

 この条約を高く掲げ、今度こそ「核なき世界」へ歩みを進めなければならない。

 核兵器禁止条約が、きのう発効した。条約締結を先導した非政府組織(NGO)「核廃絶国際キャンペーン」(ICAN)などの働き掛けにより昨年10月、批准する国が発効に必要な50カ国・地域に達していた。

 条約は核兵器を非人道的で違法と明記し、開発や保有、使用などを全面的に禁じる。核廃絶を目指す、初めての国際法規だ。前文で「全廃こそが、いかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である」とうたった。

 これまで世界の核軍縮を担ってきたのは核拡散防止条約(NPT)だ。米英仏ロ中の5カ国に核保有を認める代わりに、軍縮交渉を進めることを義務付けている。

 冷戦時代の妥協の産物とはいえ、核保有を是認していたのでは廃絶は実現できるわけがない。不参加国の核開発も止めることができず、今はイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が保有する。

 世界にある核弾頭は昨年1月現在で推計1万3000発に上る。その9割を米国とロシアが占める。偶発的な核兵器使用の可能性を否定できないのが現状だ。

 保有国は核兵器が戦争の抑止力になると主張。核軍縮の必要性こそ認めるが、条約参加は拒否している。核を持つ優位性を失うことを意味するからだ。

 NPTが核兵器を「必要悪」と位置付けるのに対し、核禁止条約は「絶対悪」とした点で決定的に異なる。

 廃絶を進める具体的な方法は締約国会議で決まるが、法的拘束力が及ぶのは批准国だけだ。条約の実効性を考えると懐疑的な見方が強いのも事実だ。

 しかし、「核兵器は違法」とする国際規範ができたことには大きな意義がある。核を持ち続けることへの説明責任を求め、放棄を促す手だてを得たとも言える。

 賛同する国をさらに増やし、保有国の包囲網を作らなければならない。

 折しも、米国で「核なき世界」を提唱したオバマ元大統領の理念を継承するバイデン政権が発足した。保有国は「抑止論」から離れ、核廃絶へ行動を始めるべきだ。

 安全保障を米国の「核の傘」に頼る日本は条約に参加していない。菅義偉首相は開会中の国会で「条約に署名する考えはない」と改めて答弁。「現実的に核軍縮を追求するのが適切だ」と強調した。

 では、核軍縮に向けどう行動するのか。それがさっぱり伝わってこない。

 そもそも核禁止条約は、広島と長崎の被爆者の「核の惨禍は二度と繰り返さない」という願いを国際社会が具現化したものだ。日本は率先して動く責務があることを忘れてはならない。

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