社説(2/23):株価3万円突破/経済の実力 過信は禁物だ

 株と無縁な人は今や少ない。直接、あるいは投資信託を通じて売買していなくても、私たちの公的年金の積立金を運用する独立行政法人は株を組み入れており、間接的に関わりがある。
 こう考えると株高は悪いことではない。ただ新型コロナウイルスの流行が続く日本経済の実態を反映しているとは言えず、手放しで喜ぶことはできない。
 日経平均株価が今月15日、バブル期以来、約30年半ぶりに3万円の大台を突破した。
 同じ日、内閣府が発表した2020年10~12月期国内総生産(GDP)の速報値は実質で前期比3・0%増と2四半期連続でプラスとなったが、新型コロナ感染拡大前の水準には達していない。
 20年通年の実質GDPは前年比4・8%減で、リーマン・ショック後の09年の5・7%減に次ぎ、1955年の統計開始以降で2番目の悪化幅だった。
 コロナの「第3波」で今年1月には2度目の緊急事態宣言が出されている。21年1~3月期も厳しい数字が出ることが予想される。
 自動車や家電、IT関連など一部が好調な半面、運輸や宿泊、飲食などコロナ禍で苦境にある業種もあり、二極化が進んでいる。コロナ関連で解雇や雇い止めになった人は、厚生労働省の今月12日現在のまとめで約8万7000人に上る。
 それでも平均株価は昨年3月の1万6000円台を底に回復に転じ、上昇基調が続いてきた。
 株価は「景気の体温計」とされてきたが、株の活況に「実感が湧かない」と感じている人は多いのではないか。
 株高の背景にあるのは世界的な金余りだ。コロナ禍の経済を支えようと、各国の中央銀行が大規模な金融緩和を実施している。市中に余剰資金があふれ、超低金利の中、有利な運用先を求めて株式市場に向かっている。
 加えて、東京市場では日銀が金融緩和の一環として上場投資信託(ETF)を長年購入してきた。保有額は昨年12月時点で時価45兆円に上るとの試算がある。
 株価を下支えし金融システムの安定につながったと評価される一方で、「官製相場」となり市場の機能にゆがみをもたらしたとの批判も強い。
 現在の株価水準はバブルとの見方さえあり、日本経済の実力と見ることはできない。このままでは1990年代のバブル崩壊のように手痛いしっぺ返しを食らう可能性も否定できない。
 政府、日銀は行き過ぎた金融緩和を縮小し、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に見合った成長軌道に乗るよう誘導するべきだ。
 株高により富裕層と、その恩恵を受けられない人々との間の格差も拡大する恐れがある。政府は弱者支援に特に目配りをする必要がある。

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