社説(2/25):洋上風力発電/地域の理解得る努力が必要

 高層ビルに匹敵するような高さの風車が洋上に立ち並ぶ。そんな光景が日本にも現れようとしている。海上の風を活用し電気を生み出す洋上風力発電を、日本で普及させる試みが本格的に始動した。

 ただ課題は山積している。適地・風の調査、技術開発、人材育成、港などのインフラ整備、送電網、発電コストの低減と、幾重もの高いハードルがある。日本の主力電源を、天然資源を燃やす火力から再生可能エネルギーに転換するには、超えなければならない壁であろう。日本の産学官の底力が試される。

 息の長い取り組みとなろう。政府は一貫性のある長期的で具体的なビジョンを明示し、産学官一体で推進できる態勢をつくりたい。その際、漁業者や海運業者らとの調整は丁寧に進めるべきだ。同時に国民、地域住民の理解を得る努力と工夫も欠かせない。

 菅義偉首相は昨年10月、温室効果ガス排出を2050年に実質ゼロとする目標を宣言した。12月に40年の洋上風力の発電能力について、原発45基に相当する最大4500万キロワットとする政府目標も決めた。

 10年前の東京電力福島第1原発事故以降、原発の稼働は低迷し、二酸化炭素を出す火力発電の利用が増えた。再生可能エネルギーの太陽光や陸上風力は立地上の限界があり、海に囲まれた日本で洋上風力は温暖化対策の「切り札」と位置付けられた。

 東北は北海道と並ぶ洋上風力の適地とされ、東北電力管内は40年の発電能力の目安が900万キロワットに上る。洋上風力参入を促す「促進区域」として秋田を含む3県の5海域が指定され、事業者の公募も始まった。

 事業規模で数千億円といわれるビッグプロジェクトである。洋上風力の設備は部品が数万点に及び、産業の裾野も広い。建設、運転、保守の各段階で地域経済への波及効果もあろう。政府は「次世代産業に育てる」(梶山弘志経済産業相)と意気込み、アジア市場への進出も想定する。

 原子力も火力も先行きが見通せない中、洋上風力を今後の有力な産業政策としたい狙いも垣間見える。ただ産業優先の前のめりの姿勢が過ぎれば、発展可能性に照らして必ずしも有益とはなるまい。

 騒音や景観など、地域住民の懸念への十分な配慮と対応は不可欠だ。魚や鳥、海洋など自然環境への影響も考慮すべき点となる。再生可能エネルギーといえども、太陽光や陸上風力の開発を巡る反対運動が各地で起きている。

 洋上風力先進地の欧州で市民が参画・投資する例もあるという。地域ぐるみである。検討に値しよう。東北を単なる場所貸しにしてはなるまい。産業として育てるなら、事業者にとって不都合な情報も地域や住民と共有したい。問題の解決策を探求し、技術的熟度を高めることは国際的な競争力の向上につながろう。

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