<NPOの杜>岐路に立つ移動支援 官民で議論、連携不可欠

移動支援の利用者の買い物(レラ提供)
公園散策の付き添い(レラ提供)
レラのメンバーたちの交流会(レラ提供)

 東日本大震災で最大規模の被災地となった石巻市。震災後、宮城県内外から多くの支援団体が現地に入り、緊急時支援から復興支援まで幅広い活動を行いました。

 札幌から石巻へ

 その中で通院や買い物など生活するための「移動」を支援し、今では地域になくてはならない存在となったのがNPO法人移動支援Rera(レラ)です。

 レラの前身は、札幌市のNPO法人ホップ障害者地域生活支援センターと社会福祉法人札幌共働福祉会です。震災後すぐに現地入りし、所有している福祉車両で車が流され移動手段を失った人への移動支援を始めました。

 その後、仮設住宅ができ、多くの人は車を取得するなどして生活を立て直したものの、公共交通の利用ができなかったり、高額の交通費が支払えなかったりなどの移動困難者は震災前より増えました。

 移動支援のボランティアで関わっていた地元の人たちは「支援は終われない」と声を上げ、地域住民が主体となり、2013年にNPO法人移動支援Reraを立ち上げて活動を継続することにしました。

 移動支援を始めてからの送迎利用登録者は18年、1600人を超えました。現在の1日の平均利用者は50人以上で、毎週のように新規登録希望の連絡があります。透析が必要な人の通院送迎は年末年始やコロナ禍でも休まず行い、出掛けることができない人の命だけでなく、心の支えにもなっています。

 有償運送も検討

 NPOやボランティア団体など住民同士の助け合い活動であっても、車で人を運送するには、道路運送法などさまざまな制度に留意する必要があります。少額でも送迎の対価を受け取る場合「自家用有償運送」として、運営協議会の設置や運輸局への登録が必要です。

 レラも法人化当初は有償運送をしたいと考えていたものの、利用料を払うのが困難な人が多かったため、ガソリン代など実費分のみの受け取りであれば登録を要しない「無償送迎」の範囲で活動してきました。

 しかし、利用者から受け取る実費分だけでは運営は困難です。研修(運転介助や障害者理解、接遇など)を受けて活動に当たる有償ボランティアの運転手や、事務局スタッフの人件費、車両8台分の維持・管理費がかかります。寄付されて7年たつ車両の合計走行距離は約190万キロ(地球約47周分)に上り、故障が増え、修理代もかさんでいます。

 これまでは国などからの被災地復興支援の補助金や、民間の助成金が主な運営資金でしたが、震災から10年を過ぎると補助金・助成金は終了する、と言われています。活動を継続するため、今後は有償運送を行うための登録をし、無償での支援が必要な人と有償運送とを組み合わせて運営していく方針です。

 関心持つ契機に

 今や、日常生活における移動問題は全国共通の課題です。少子高齢化などにより公共交通網が縮小。一方、スーパーなど店舗の郊外進出や病院の集約化などで生活圏が広域化する中、高齢者の運転免許返納の風潮が強まっています。

 このような状況で、誰もが移動手段を確保し地域で安心して暮らし続けるためには、地域に合ったきめ細かな移動支援をするNPOが必要不可欠ですが、NPOを支える制度はまだ整備途上です。

 また、各地域には道路運送法に基づき「地域公共交通会議」などのさまざまな協議会などが設置され、地域全体の交通網を整備するには、NPOなど多様な主体が参画することが望ましいとされていますが、参画できていないのが実情です。

 被災地で移動支援をしたレラの活動は、先取りした取り組みであるといえます。今や全国から、「移動支援のモデルを知りたい。勉強したい」といった問い合わせが増えているそうです。

 「社会全体で移動に困る人がいなくなる『仕組み』をつくらなければいけない」とレラ代表の村島弘子さん。「公共交通がカバーしきれない部分を、どのようにして行政と民間事業者、住民が一緒に考え、総力戦で移動を支えていくか。福祉、教育、まちづくりなどさまざまな分野を超えた連携が必要」と強調します。

 移動問題に関するアンケートを行い、データ化を計画するレラ。連携と協働を生み出す覚悟で、震災11年目へ踏み出します。

 人は皆、いつか高齢になります。私たち一人一人が移動について関心を持つことが必要です。レラの活動を踏まえて再認識したいと思います。
(認定NPO法人杜の伝言板ゆるる 小野寺真美)

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